ふたつでひとつの物質試行「50+51」
鈴木 了二(2010年度紀要AARRより)
物質試行50「下田の住宅」
「下田の住宅」において3つのヴォイドはそれぞれ、居間とダイニングに面する南の内庭、キッチンに面する北の内庭、2階の寝室や浴室に面する東のデッキとして使われている。既存の母屋に対面する北側の立面には母屋の印象的な視角を切り取るために3つの窓を設けているが、それ以外の南、東、西の3つの立面に窓はただのひとつも開けてはいない。そのかわり人や物や気配の出入り、そして採光や通風は大小の3つのヴォイドを媒介にしている。またこれら3つのヴォイドは外部である周辺の環境と内部とを繫ぐジョイント、もしくは触手のような役割も持っている。眺望的にも、母屋・温室・離れ・花壇・カマド跡・風呂場・周囲の山並みなど、どれも建主にとっては愛着のある風景の要素を、ひとつひとつ特徴的なショットとして切り出すことによって、全体をいっぺんに見てしまうと漫然としていて取り留めのない風景を、ショットを繋ぎ直すように構成し直すことができないかと考えた。白が主たる色彩となったのは、床、壁、天井のすべてを、事物を映すスクリーンとして考えたからだ。そのために「下田の住宅」は一見ホワイトボックスに見えるかもしれない。しかしその白は表面的な塗装によってもたらされているのではなく、かなりの部分を占める漆喰やウレタンのなどの物質素材そのものの白さによっている。異質な物質たちが白さの周りに集まって光のなかに溶けるような感じ、床、壁、天井といった建築の部位を溶かしてしまうような感じ、これもまたDUBの効果であったかもしれない。





