2019年度卒業設計 稲門建築会賞受賞作品
国指定史跡である七尾城跡はその名の由来である7つの尾根一帯に要塞を築く事で、古来より難攻不落の山城として名を上げた。しかし現在、主郭部以外は風化が進み、訪問順路も非常に限定されている。主郭部に残る遺構をより顕在化させ、またそれ以外の未開の砦を調査するための拠点施設と展示棟の設計を行う。
研究者の為の宿泊棟は調度丸下の急斜面に位置する。ここはかつて敵兵の侵攻ルートであり、滞在者は複雑な階層構造をもつ建築内部で侵入者の苦労を追体験することになる。 観光客の為の展示棟は桜馬場下斜面に位置する。畠山氏時代に築かれ、今はただ斜面に屹立するだけの石垣に正対するよう舞台を設け、多方向から人を引き込む。
建物の立地や内部空間は多少の不便さを許容し、訪れる人に自然の美しさのみならず、当時の危機迫った状況、この場所が耐えてきた時間を感じさせる。また視覚体験だけの存在だった遺構に建築を挿入することで、五感へ働きかける新しい文化拠点を設計した。