Research Theme 研究テーマ
少子高齢化、デジタル化、グローバル化の3つのキーワードから、スポーツと個人や社会の関係について社会学、スポーツ・健康科学、政策学、経営学の視点で変化を捉え、その結果をもとに持続可能な未来のためのスポーツの役割と可能性について提言する。
Research Director 所長
Member メンバー
- 佐藤 晋太郎 スポーツ科学学術院スポーツ科学部教授
- 高橋 義雄 スポーツ科学学術院スポーツ科学部教授
- 中村 好男 スポーツ科学学術院スポーツ科学部教授
- 松岡 宏高 スポーツ科学学術院スポーツ科学部教授
- 石原 靖士 株式会社コナミデジタルエンタテインメント執行役員
- 神原 章僚 公益財団法人ときわ会渉外担当部長
- 神田 浩聡 アーサー・ディ・リトル・ジャパン株式会社マネージャー
- 斉藤 正行 一般社団法人全国介護事業者連盟理事長
- 関口 慶太 法律事務所碧・代表弁護士
- 田丸 尚稔 一般財団法人 渋谷区スポーツ協会専務理事
研究キーワード
スポーツ、未来、環境、デジタル、高齢化、少子化、グローバル
研究概要
我が国の人口減少と高齢化は、地域経済を縮小させ、さらなる人口減少と少子高齢化につながる悪循環を加速させるおそれがある。特に過疎地域は、コミュニティが維持できないなど地方における生活に課題が生じている。こうした地域では、孤独や孤立の問題、さらには高齢者のフレイルが問題となっている。いっぽうで、スポーツは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の課題の解決ツールとしての役割が期待されている。
研究所では、急速に発展しているIT技術を活用した新しい形のスポーツの役割と可能性を明らかにする研究に着手する。IT技術を活用したバーチャルスポーツは、脳活動の活性化との関係がすでに捉えられているが、さらに身体運動を含むゲームについては、高齢者の身体運動の機会を確保する可能性もある。こうしたバーチャル空間におけるスポーツは、スポーツ庁が「バーチャルスポーツとまちづくり研究会」(座長:高橋義雄)を2024年度に発足させて調査を始めたように、わが国においてその可能性を探る活動は拡がりをみせている。このスポーツ庁の研究会は、バーチャルスポーツ/eスポーツは、イベントを通じて域外から誘客し交流人口の増加を伴う地域活性化に寄与する可能性も指摘されている。
国際的には、2026年に開催される愛知・名古屋アジア大会でeスポーツが正式種目となり、2027年には国際オリンピック委員会がIOC eSports Gamesの開催を予定するなど、国際的にもバーチャルスポーツとeスポーツを活用したよりよい社会づくりが模索されている。またバーチャルスポーツ/eスポーツは、デジタル技術を活かして異なる会場間でのスポーツ・運動が可能となる。実際、インターネットで接続した機器により空間を超えた交流も行われている。
そこで、早稲田大学スポーツ未来研究所は、わが国の将来の人口動態を基にした健康やコミュニティ形成に寄与するスポーツの在り方を模索することを目的として設置する。研究事業では、まず未来型スポーツであるバーチャルスポーツ/eスポーツの可能性を探るべく、バーチャルスポーツのイベントを人口減少の著しい地域にて開催し、高齢者の参加を促すとともに、その高齢者の身体的・社会的変化を調査し、バーチャルスポーツ/eスポーツの高齢化する過疎地域での活用方策を検討する。特に、震災被害地域において、被災により避難した住民をバーチャルスポーツ/eスポーツを活用することで被災地とつながりが維持できるのかについてその可能性を検討する。これらの活動は、ソフト面での被災地支援事業を提案するものであり、この成果は、過疎地域のコミュニティ形成・まちづくりにも寄与すると考えられる。加えて、バーチャルスポーツ/eスポーツから始める研究が、高齢者の孤独や孤立、フレイルの問題の解決に寄与する「e健康」へと研究視座を拡大する可能性が考えられる。
本研究所では、本研究事業の結果を踏まえて、長期的には、栄養とスポーツの関係、スポーツがもたらす疾病予防・リハビリ効果、メンタルヘルスへの影響など複合的な視点での高齢者や障がい者への身体的・社会的変化への影響の調査、スポーツ以外の観点も取り入れた地域コミュニティの形成のあり方の検討などを推進していく。そして持続可能な未来のためのスポーツの役割と可能性を研究し、スポーツと社会がともにイノベーションおこしながらより良い未来の構築を目指して活動していく。