計算材料科学特別セミナー ソフトマター の第4回「シミュレーションによる物性値測定とその精度の確保」が3月8日に開催されました。
分子動力学シミュレーションは、物質を構成する原子・分子の集団としての振る舞いを力学的に計算する手法です。どの時点でもすべての原子・分子の位置および速度が計算されているので、もっとも多くの物性値測定が可能です。ただし、シミュレーション独特の気を付けなければいけない点があります。それらの背景も含めて説明しました。
シミュレーションだけではなく、科学的に物事をアプローチしていくには、換算単位系の考え方が重要です。換算単位系を通して現象を捉えることにより、その現象にとってどういうパラメータが重要か理解することができます。例として流体力学の重要なパラメータであるレイノルズ数がどのような考えで導かれるのかをまず復習しました。次に分子動力学シミュレーションにおける換算単位系の考え方を対比して学びました。換算単位系から導かれる球形粒子系のスケーリング則についていくつか見ていきました。そして、それらのスケーリング則に共通する考え方を学びました。
その後、ゲスト講師である米谷慎先生に「ソフトマター -応用・実際・実践-」との題で1時間半ほどご講義をいただきました。分子動力学計算のソフトマター応用の具体例をたくさん見せていただきました。ソフトマターに適応する際の粗視化の仕方や問題点についてノウハウも含めて教えていただきました。汎用力場と既存計算ソフトウェアについて歴史的経緯も含めて解説していただきました。会場からの質問にも答えてくださいました。
後半は精度の確保の仕方について多角的に考察しました。特に
1. 計算上の数値精度
2. シミュレーション運用上の精度
3. 物理的精度
との3つの観点で分けてみていきました。
最後に機械学習と分子動力学法の相互補完的な役割分担について講演者の考えを述べました。
その後、受講者の方々から質問を受けるとともに議論することができました。
また、講演後にメールで感想等をお寄せくださった皆様、ありがとうございました。
第4回「シミュレーションによる物性値測定とその精度の確保」
青木 圭子(早稲田大学各務記念材料技術研究所 客員上級研究員)
ゲスト講師:米谷 慎(一般財団法人 工業所有権協力センター 主席部員)
日時:2023年3月8日(水)13:00~18:00
開催方法:オンライン(Zoomミーティング利用)
参加人数:62名
〔内訳〕学内11、学外47(大学13、企業等29、研究機関5)、講師他4