Kagami Memorial Research Institute for Materials Science and Technology早稲田大学 各務記念材料技術研究所

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研究紹介 菅原 義之研究員「ヤヌス ナノシート」

高度に発展した現代社会において、材料に対してより精緻な材料設計・材料合成が求められています。基板などの上で特定の位置を機能性物質で修飾するという手法は、機能の集積などの観点から様々な分野で活用されています。一方、高分子では、1 つの高分子鎖に2つあるいは3 つの領域を有するブロック共重合体を作ることにより、ランダムな共重合体にはない機能を発現させる技術が確立されています。このような、機能や性質を領域を分けて導入することで高機能材料を創出するという戦略が展開するなかで、近年注目を浴ているのがヤヌス材料です。これは、2つの異なる性質の面が、1つの粒子などに存在しているもので、その名はローマ神話に出てくる、2つの顔をもつ双面神“ヤヌス神” に由来し、1991年のピエールジル・ドジャンヌ博士のノーベル賞受賞講演で“Janus grain”が使われてから広く知られるようになりました(P. G. de Gennes, Rev. Mod. Phys., Vol. 64, July 1992, pp.645-648)。半球づつに異なる性質を持っているヤヌス粒子は代表的なヤヌス材料です。半球が親水性、もう片方の半球が親油性を有しているヤヌス粒子は固体の界面活性剤として働き、エマルション(乳化液)を安定化することが多くの研究から明らかになっています。
一方、二次元材料にも多くの関心が集まっており、特にナノメータレベルの非常に薄い厚みを有する無機ナノシートの合成技術とその応用が近年大きな発展をとげています。ポリマーの中にナノシートを分散させてハイブリッド材料を作製する技術はその代表例です。加えて、ナノシートをナノ材料として使う技術も、今後重要になるものと確信しております。菅原研究室では、無機層状結晶の構造の特徴と表面の反応性を活用し、表面に有機官能基を固定化する技術を発展させ、前者についてはナノシートを用いた高機能ハイブリッド材料の作製、後者について2 層構造のナノシートの作製などに携わってまいりました。
そして現在検討を進めているのが、2 つの異なる官能基を表裏に固定化したヤヌスナノシートの作製です。このヤヌスナノシートは、シートの裏表に別々の機能を付与することができます。表面と裏面は明確に分離されているため、ヤヌス材料としての特質を最大限発揮できると考えられます。ヤヌスナノ粒子では達成できない機能の発現を目指し、現在精力的に研究を展開しています。今後も学会等で研究成果を発表して参りたいと考えておりますので、皆様方のご指導、ご鞭撻を賜りましたら幸いです。

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