Kagami Memorial Research Institute for Materials Science and Technology早稲田大学 各務記念材料技術研究所

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研究紹介 山口 勉功研究員「金属リサイクルと金属製錬の共同研究の拠点形成を目指す」

レアアースや貴金属などのレアメタルや、銅、鉛、亜鉛などのベースメタルは、自動車や家電などのハイテク産業には欠かすことができない金属素材であり、我が国は金属資源の大消費国です。しかしながら、我が国はその金属資源の多くを海外からの輸入に頼る、資源小国でもあります。ハイテク産業の維持や新素材の開発とその社会実装のためには金属素材を安定的に産業界へ供給することが不可欠です。このような状況の下、2012年には経済産業省のエネルギー基本計画として、戦略的鉱物資源30鉱種について国内需要に対する国内企業の権益による鉱石とリサイクル地金の量を、2030年までにベースメタルで80%以上、レアメタルで50%以上とする数値目標が掲げられました。また、国連では持続的かつ発展的社会を目指す “SDGs(Sustainable Development Goals)” が採択され、EUでは環境への影響を最小限に止めながら、持続可能な方法で地球の限られた資源を有効利用する“資源効率(Resource efficiency)”の概念や、“Circular economy” と呼ばれる製品やその資源の価値を減ずることなく、リサイクルなどにより永続的に再生・再利用し続ける経済成長モデルが提案されています。新たな動きとしては、有害廃棄物の国境を越える移動とその処分を規制するBasel条約の改正が予定されており、我が国へ世界中から廃棄された使用済み製品の移動が容易になると考えられます。
このような社会環境の変革の追い風を受けつつ、本研究室では大学院生11名と学部生6名の元気でかつ優秀な学生達と、非鉄金属のリサイクルと製錬に関する研究を各種企業と連携しながら進めています。具体的な金属リサイクルの研究テーマとしては、自動車業界ではHVとEV化が進む中、モーターにはネオジムやジスプロシウムなどのレアアースからなる希土類磁石が使用されています。しかしながら、市中に出回ったHVやEVのモーターからレアアースは回収されていないのが現状です。そこで自動車企業と共同で手解体等の省力化を目指した使用済みEVモーターからのレアアースの回収を試みています。図には本研究室が提案しているリサイクルプロセスを示します。この方法は、希土類磁石を含有するEVモーターをB2O3フラックスとともに1500℃という高温で溶融することにより、EVモーターの主成分である金属鉄とレアアースを分離するものです。回収されたレアアースを含有するスラグは湿式法により高純度のレアアース酸化物として再生されます。このプロセスの可能性を検証する目的で、早稲田大学各務記念材料技術研究所が現有する100kg程度を溶解可能な高周波誘導炉を利用しています。また、自動車の排気ガス浄化触媒から白金族金属(PGM, Platinum Group Metal)を高効率に回収する高温リサイクルプロセスの開発を行っています。一方、非鉄金属製錬においては、金属資源の枯渇による鉱石中の目的金属の品位低下と不純物濃度の増加が著しく、またリサイクル原料の処理量の増加に伴い、天然鉱石を扱ってきた従来の操業では対応が困難になりつつあります。不純物を除去しつつ、目的金属の損失を抑えることが可能な操業条件が模索されています。本研究室では、銅や貴金属などの有価金属のスラグ損失のメカニズムを明らかにする研究を遂行し、有価金属の損失抑制を目指した操業条件の提案を行っています。
早稲田大学各務記念材料技術研究所は2018年4月に文部科学省から環境整合材料基板技術の共同研究拠点に認定されました。ここでは環境整合材料の開発を示すキーワードとして、“長寿命”、“リサイクル”、“省エネルギー” が掲げられています。本研究室では非鉄金属のリサイクルと製錬の基板技術の開発を企業と連携しながら推進することにより、素材や材料と環境の調和と融和を推し進めたいと考えております。さらには早稲田大学各務記念材料技術研究所が金属リサイクルと金属製錬の共同研究 の拠点になることを目指します。

図 提案するEVモニターからの希土類元素の回収プロセス

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