Kagami Memorial Research Institute for Materials Science and Technology早稲田大学 各務記念材料技術研究所

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研究紹介 小林 正和研究員「継続するには力がいる」

材料の研究というのは地道な努力が必要だとよく言われています。小さな成果を積み重ねていく、なんらかのタイミングにブレークして花が開く、ということでしょう。例えば、「レジスト」、と呼ばれる薬品は半導体の表面を精々数ミクロン程度の厚みにしか覆わないし、製品を完成させるまでに除去してしまいます。このような材料に関しても、とある企業は品質向上に向けて継続的に技術を積み重ねることによって力をつけていきました。そしてそのような努力を継続させた日本の企業が、他国の産業を脅かすほどの力を蓄えることになったのだと思います。一見地味な材料かもしれませんが、他国では同等の品質のものが作れない、というものが日本にはまだまだ多数あると思います。
これらの材料開発や技術改革には多くの時間や資本の供給が必要だと思われますが、その途中では世間の冷たい風に当たり、立ち止まってしまった技術もたくさんあると思います。図は関連半導体分野の研究者が多く集まる国内学会のプログラムです。1992 年の4月の学会においてGaN に関する研究発表が何件くらいあったかを示しています。これだけ件数が少ないと研究者としては「本当にこの材料に関する研究を続けて良いのか」という葛藤と「誰がサポートしてくれるのだろう」という不安があったことは容易く想像できます。最近の状況についてですが、同じ学会で同じ材料に関する研究発表は学会の全期間(4日間)、すべての時間帯において行われており、当時の10 倍以上の発表件数となっています。発表件数の比は研究人口や供給資本の比を表すものであり、その変化には目を見張ります。1992年当時、葛藤を抱えながらもその材料をあきらめることなく信念をもって研究開発を継続させた人の中からノーベル賞の受賞者がでています。その地道な努力を周囲で支えてくれた人や機関も多かったことと推察いたします。継続することで力が蓄えられたことは疑いのない事実ですが、継続させるための力も相当必要だったはずです。
冒頭でも記しましたが、地道な努力を継続するには様々な力がいると思います。若い世代の研究者には信念を持って継続的に材料開発に取り組むことを期待したいですし、円熟期世代の人たちには、その信念を支えてほしいと思います。そうすれば材料開発の分野でもさらに多くのノーベル賞受賞者が出てくるのではないでしょうか。

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