- 研究番号:21P13
- 研究分野:technology
- 研究種別:プロジェクト研究
- 研究期間:2021年04月〜2024年03月
代表研究者

栗原 正典 教授
KURIHARA Masanori Professor
創造理工学部 環境資源工学科
Department of Resources and Environmental Engineering
URL:http://www.kurihara.env.waseda.ac.jp/concept.html
研究概要
国際石油開発帝石株式会社(INPEX)は、現在アゼルバイジャン共和国において石油開発の権益を保有している。INPEXは、同国との友好関係を深め、同国における日本の石油開発技術に対する信頼感を増幅させ、今後権益を確保・拡大することを目的に、2015年より、同国の国営石油会社SOCAR社の若手技術者に対し、包括的スキル向上を目指した人材育成研修を実施してきている。この研修はINPEXが経済産業省より受託し、研修生の受け入れ、技術教育、現場見学、日本文化見学、等を実施するものであるが、早稲田大学はその主たる技術教育部分を、本プロジェクト研究の第1期としてINPEXより受託した。2015年には、研修計画の立案、SOCAR社への説明、アゼルバイジャン共和国における短期模擬講義、長期(3か月間)研修の準備を行い、2016年、2017年には、早稲田大学での長期研修を実施した。さらに2017年には、SOCAR傘下の大学(Baku Higher Oil School)を対象に、EOR(Enhanced Oil Recovery:石油増進回収法)の特別講義も実施した。これらの研修はSOCAR社に高く評価され、同国のマスメディアでの紹介、SOCAR社総裁からの感謝状の送付、日本の経済産業大臣や駐在大使への感謝のメッセージの発信、等を受けてきている。INPEXは2017年に同国における石油開発の権益の延長に成功したが、これらの研修もINPEXの権益延長に大きく寄与したものと自負している。
当初の計画では、この権益延長の成功を機に本研修を終了する予定であったが、SOCAR社、アゼルバイジャン共和国政府から本研修継続の強い要請があったことから、経済産業省が研修の延長を積極的に支援し、INPEXは研修継続を決定した。早稲田大学は、上記と同様に、この研修の技術教育部分を本プロジェクト研究の第2期としてINPEXから受託し、2018年にはSOCAR社において、同社の技術者・研究者および大学の教員を対象にEORシミュレーションのセミナーを実施し、2019年には早稲田大学での長期研修を実施した。2020年も同様の研修を計画し、INPEXとの契約締結の準備を行っていたが、COVID-19の影響、さらにはアゼルバイジャン共和国と隣国のアルメニア共和国との紛争のため、研修を中止せざるを得なかった。このように、第2期の研修が消化不良に終わったため、SOCAR社、アゼルバイジャン共和国政府から再度本研修継続の強い要請があり、経済産業省が研修の延長に向け、INPEXと契約の準備をしている。早稲田大学は、この研修の技術教育部分を本プロジェクト研究の第3期としてINPEXから受託したいと希望している。
本プロジェクト(第3期)の目的は、基本的には第1期・第2期の研修と同様に、仮想油層を対象とした実践的な油層評価、油層モデリング、油層シミュレーション、経済検討・開発計画策定等に関する講義・演習教材を作成・改訂し、SOCAR社の若手技術者に対し研修を行うことであるが、さらに研修を充実すべく、研修でカバーする講義・演習項目を拡張すること、アゼルバイジャン共和国の大学と交流すること、等も目的としている。早稲田大学では上記研修を効果的なものとすべく、座学のみならず実際のデータ解析や油層モデリング等の演習に重点を置いたワークショップ形式を採用することを計画している。さらにはアゼルバイジャン共和国における石油開発の現状に則した、いわゆるカスタマイズした研修を実施する計画である。具体的な計画としては、2021年には、アゼルバイジャン共和国において、あるいはオンラインで短期間の研修を実施する計画であるが、そのための教材も作成する。2022年および2023年には、早稲田大学に研修生を受け入れる長期の研修、あるいは長期の研修と短期の研修の両者を実施する計画で、そのための拡張計画の策定とそれに沿った教材の改訂・補強を行う。
アゼルバイジャン共和国では、今や早稲田大学が日本で最も有名な大学となっている。本プロジェクトを通じて同国との友好関係をさらに深めることは、早稲田大学の存在を示すのみならず、今後の日本の石油開発の権益拡大等に繋がり、ひいては日本のエネルギー安全保障の一翼を担うと期待される。