中村 隆之教授の著書『ブラック・カルチャー 大西洋を旅する声と音』が2025年4月に(株)岩波書店で刊行されました。
【著者】 中村 隆之
【出版社】 岩波書店
【出版年月】 2025年4月
【ISBN】 9784004320616
*出版社のリンク:ブラック・カルチャー/中村 隆之|岩波新書 – 岩波書店
中村 隆之教授による紹介文
この本は、早稲田大学法学部で著者が受け持つ一般教育科目「芸術論I B (中村)」の授業(2025年度春学期開講科目)から生まれたものです。「芸術論」の授業は、アフリカ大陸から奴隷船で「新大陸」に連れて行かれたアフリカ系の人々が、持たざることを強いられた奴隷という境遇から、それでも自分たちの文化をたくましく創り上げていった、その歴史をたどっていきます。
この本では、「ブラック・カルチャー」を、一般にそう思われるような20世紀以降のアメリカ合衆国のそれに限らず、北米・カリブ海・南米の奴隷制社会を経てきたアフロ・ディアスポラ(故郷を離れたアフリカ系の人々)の「400年」にわたる文化創造全般を指す言葉として捉えています。そのように捉えるとき、音楽に代表されるブラック・カルチャーが、その都度変容を遂げ、ときに大胆な変化を受け入れながらも「変わりゆく同じもの」(アミリ・バラカ)として続いていくという展望を得ることができます。そしてこの絶えざる変化は未来を切り拓き、先行きの不安な日本社会に暮らす私たちにもまた、生きる勇気を授けてくれます。
ところで著者は本学法学部での一般教育科目と自分の研究関心を連動させて本を書くことに取り組んでおり、以前書いた『野蛮の言説 差別と排除の精神史』(春陽堂書店、2020年)もまた、教室から生まれました。こちらの本は「地域文化I D (中村)」(2024年度秋学学期開講科目)で使用しています。ですが、これらの科目に興味をもってくれても、当然ながらすべての学生が受講できるわけではありませんし、さらには「芸術論」と「地域文化」を同年度に開講することも、現時点では諸事情から叶いません。
そのようなことを解決してくれるのが、本という誰でも好きな時に読めるフォーマットです。今回の本に関しては、幸いにして「岩波新書」というレーベルに入ったことから、安価かつ安定的に入手できます。早大生のみなさんには、本学法学部の一般教育科目にはこんな内容を学べる授業があるのだというサンプルのひとつとして、キャンパス内の生協などで本書を手に取っていただけたら、とてもうれしいです。