守中 高明教授が訳者となっている デリダ『他者の単一言語使用 あるいは起源の補綴』が刊行されました。
【著者】デリダ
【翻訳】守中 高明
【出版社】岩波書店
【出版年月】2024年8月
【ISBN】9784003860229
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守中 高明教授による内容紹介
フランス現代哲学の巨星ジャック・デリダ(1930‐2004)による自伝的回想禄にしておよそ最もラディカルなヨーロッパ近代批判――それがこの本です。
フランス植民地支配下のアルジェリア――この土地に生まれたユダヤ人デリダは、フランス語を唯一の言語として育ち、その文化は奇妙なことにキリスト教的=ラテン的なものでした。抑圧されたアラブ人の言語と文化から切り離される一方、ユダヤの伝統と記憶も忘却するよう社会的に強いられていたデリダ。しかしそれでいて、唯一の言語であるフランス語もまた、遠く地中海を隔てた「本国」の言葉であり、彼にとって自然な同一化の対象ではあり得えませんでした。
この経験の帰結を、デリダはつぎのテーゼに集約しています――「そう、私は一つしか言語を持っていない。ところがそれは私のものではない」。
たった一つの言葉が、母語でさえもが、本来性をそなえておらず、私のものではないということ――これはしかし、植民地ユダヤ人の特殊な経験ではありません。言語とは誰にとっても所有できず、帰属できない場であり、にもかかわらず、本来性と自己固有化の幻想を植えつけてきたのがヨーロッパ近代なのではないか……。
「脱構築」の戦略で名高いデリダが撃つ、言語の政治。この視座からみるとき、現代世界における英語の一元的支配はどのように批判されるべきでしょうか。「グローバル・ノース」の暴力が問われている今、必読の一冊です。