School of Law早稲田大学 法学部

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中村 隆之教授の共訳書 『黒人法典―フランス黒人奴隷制の法的虚無』が上梓されました

中村 隆之教授が共訳者となっている 『黒人法典―フランス黒人奴隷制の法的虚無』が刊行されました。

【著者】ルイ・サラ=モランス
【翻訳】中村 隆之、森元 庸介
【出版社】明石書店
【出版年月】2024年6月
【ISBN】9784750357614

出版社のリンクはこちらです。

中村 隆之教授による内容紹介

「黒人法典(Code noir)」という言葉をご存知でしょうか。時は1685年、ルイ14世の治世のもとにフランスで制定された法文書です。全部で60条からなるこの法典(その名称に比べると実際は小さな条文集)は、カリブ海地域のフランス領の島々の黒人を対象とするものでした。ご存知のとおり、西欧はコロンブス「新大陸」到達から彼の地を植民地にし、先住民を虐殺し、熱帯で当時貴重だった作物(特にサトウキビ)栽培のための農園運営を行いました。その植民地の農園に送り込まれたのが、アフリカ大陸の黒人です。アメリカ諸地域で奴隷貿易と奴隷制が決定的に廃止されるまでの数世紀、多くの人々がそこで奴隷として暮らしました。

ルイ・サラ=モランス『黒人法典――フランス黒人奴隷制の法的虚無』(中村隆之+森元庸介訳、明石書店、2024年)は、題名のとおり、黒人法典を題材とする思想書です。

原著は1987年に出版され、フランスの著名な出版社の看板的叢書に入り、以後、現在まで読み継がれる、「現代の古典」と呼びたくなるような本です。本書によって黒人法典が翻刻され、そこに詳しい注釈がつくことで、この法典の存在と意義が現代に明るみとなりました。現在、黒人法典は、フランス史をとりわけ「移民」の観点や世界史の展望において考える場合、黒人奴隷制を法のなかに明確に書き込んだ、象徴的文書として記憶されています。

本書の特徴は、著者が彼の地で奴隷とされた人々の立場を代弁するつもりで、黒人法典が成立した理由と、この法文書がフランスにおける奴隷制の決定的廃止の年である1848年まで生き延びた理由を、当時の神学者や啓蒙思想家の人種や奴隷制をめぐる考えを批判的に検証しながら解明しようとした点にあります。著者はフランス啓蒙思想に冠される輝かしい光を、これを欺瞞だとして撃とうとします。このような挑戦的な主張である以上、さまざまな論争を生み出しました。

この仕事を引き受けた時、法学部生のみなさんにぜひ読んでみてもらいたいと思っていました。その願いが4年という決して短くない歳月を経て、ようやく実現しました。人間を奴隷として定めるという、決して許されないような法律がかつてなぜ存在したのか。そして、それはなぜ簡単には廃止されなかったのか。人種主義や植民地主義といったなかなか解決しえない困難な問いを法に引き付けて考えてみるために、在校生はもちろん卒業生のみなさんにも、お手にとっていただきたいです。

中村隆之

 

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