Graduate School of Letters, Arts and Sciences早稲田大学 文学研究科

その他

自分の世界を広げる(東洋史学コース:松浦峻大さん)

私が東洋史学コースを志望した理由

私は学部生のころより、朝鮮の歴史に関心がありました。とりわけ興味を引かれたのは、近代以降の朝鮮半島に生きる人々が、遠い過去である古代の物事についてどのように考え向き合っていたのかという問題です。そこには現代の社会に暮らす私たちにとっても、切り離せない問題が潜んでいるように思えました。そこで、このような問題意識のもとで研究を進めている李成市先生に師事し、自らの手でこの問題を検討したいと考え、東洋史学コースを志望しました。

東洋史学コースの雰囲気、教員・学生などとの交流

東洋史学コースには中国や韓国出身の留学生が多数在籍しており、コース室では自分の聞き慣れない言語が飛び交うのが日常的な光景でした。それは多様性が確保されているということであり、東洋史学コースの魅力だと思っています。

日本で生まれ育った私は、日本国内では普通の存在でもあるかもしれませんが、東洋史学コースに在籍してからは、学部時代に東洋史学を専攻していなかったこともあったせいか、少し特殊な存在なのかなと思うこともありました。そのようなわけで、当初は「場違い」なところにきてしまったという印象を持ったこともありましたが、先生方、先輩方からの積極的なサポートもあり、次第にそういった感覚はなくなっていきました。

研究にかけた思い

私は、朝鮮史上最初の国家とされる古朝鮮と、それを征服した中国の漢王朝が設置した楽浪郡(BC108~AD313)の歴史に注目しました。19世紀末以降、近代の征服者である日本人の研究者らによって楽浪郡研究が進められる一方で、被支配者の朝鮮人による民族主義的な研究が進められていました。そうした研究は学界のメインストリームでは認知されなかったものの、朝鮮の民衆に強い影響を与えました。そこで注目されるのが、解放後の北朝鮮において、国家権力による学問に対する統制が強まる中で、逆説的に、そのような非アカデミックな研究が体制側からの「お墨付き」を得るに至ったという点です。

この問題は、ナショナリズムと古代史の関係、政治と学問の関係を考える上で看過できない問題を孕んでいると考えました。しかしこうした視角からの研究はいまだ不十分のように見えました。そういった思いが私を本格的な研究の道へと誘いました。

自分の研究がこの分野に学術的な進展をもたらせたかというと心許ないでのすが、自分が重要だと考えた問題に対して、自らの見通しのもとで修士論文を書きあげ、自分なりの答えを導き出すことができたという点には、自負と達成感を覚えています。

修了後、修士課程での生活を振り返って

私は今、北朝鮮のニュースを収集、翻訳する仕事をしています。私が大学院で北朝鮮研究者たちの文献を徹底的に調査、研究していたという点が、職場と合致するものと評価され、採用につながったようです。業務においては、大学院時代に北朝鮮文献と毎日のように接してきた経験を活かし、韓国とはまた異なる言辞をもって発信される北朝鮮ニュースの翻訳を日々行っています。また、ひたすらに北朝鮮の報道を追いかける中で、自分の研究にも活用し得る情報を見つけるということも珍しくありません。このような生活は、大学院での学びがなければあり得なかったものでしょう。

たとえ私が在学中の研究と全く関係のない仕事をしていたとしても、修士課程での学業が無駄だったとは考えません。大学院では学部の頃とは比較にならない高度な授業を受けるようになり、自分の考えを発信する機会も格段に増えました。そうした毎日を過ごす中で、自分の研究の甘さとでも呼ぶべきものが取り払われたり、学界内の動向により鋭敏になったりしたように思います。

さらに、ゼミや学会、国際的なセミナーに参加する中で、数多くの尊敬する研究仲間に出会い、学術的な議論を深め、自分一人では理解の及ばない領域のことまで目に見えるようになっていくのを感じました。端的に言えば、自分の世界が大きく広がったということなのでしょう。今ではこうした世界を持たない自分など考えられませんし、大学院入学前の自分に戻ることなどありえません。

このような得難い思いと経験を手に入れることができたというだけでも、大学院で学んだ甲斐があったと思います。

プロフィール

愛知県出身。慶應義塾大学文学部人文社会学科西洋史学コース卒業後、早稲田大学大学院文学研究科東洋史学コースに進学。在学中は北朝鮮における歷史研究をテーマに研究。修士論文の題目は「北朝鮮における古代史観の構築―古朝鮮・漢四郡「位置論争」とその帰結1949-1963」。現在は団体職員として、北朝鮮メディアが発する公開情報の翻訳を担当。

(2021年3月作成)

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