Graduate School of Letters, Arts and Sciences早稲田大学 大学院文学研究科

その他

生を豊かにする出会いの場所(哲学コース:山本亮史さん)

私が哲学コースを志望した理由

大学院に進むかについては直前まで悩んでおり、一度は就活の準備を始めもしました。ただ、学部で見つけた研究テーマについて煎じ詰めるには、あまりに時間が足りないというのが実感でした。最終的に、中途半端に学生生活を終えたのでは後悔すると考え、進学を決めました。

文研の哲学コースを選んだのは、取り組んでいたテーマの源流であるヘーゲル哲学を研究対象の一つとされていた教授がいらっしゃったこと、その方につくことを学部時代にお世話になっていた先生方もすすめてくださったことが直接の理由です。そのほかに、個性的な学生たちと交流できるという期待や、図書館をはじめとした優れた環境なども挙げられます。

哲学コースの雰囲気、教員・学生などとの交流

私の修士課程は、総じてひととの出会いに尽きます。所属した研究室には、ハイデガーやニーチェ、リクールと、様々な哲学を研究する学生が混在しており、それぞれから刺激を受ける空間になっていました。互いに専門が異なればこそ、自明としていた前提を問い直され、問い直すようなことも可能で、実にパフォーマティヴに哲学に取り組む場だったといえます。

哲学コース全体をみると、思想史や語学などの訓練をしっかりと積んでおり、自身の専門分野以外にも通じた院生が多く在籍していた印象です。そうしたストイックさとともに、ゆるやかな横のつながりが存在し、読書会や発表の準備で切磋琢磨できました。また、期待通り個性豊かな方々が揃い、興味をもった題材をおのおの楽しむ姿には、学ぶところが多くありました。

研究にかけた思い

私が扱った研究テーマは決して「有名どころ」ではなく、周囲との間に共通理解があまりない状態でした。それゆえ常に、自身が展開したい議論の前提を、相手に伝わるよう再構成して表現することを心がけました。

ところが前提を提示してみると、それが着手点として適切なのかが問われることもしばしばでした。私自身、依拠した哲学者の思想をなぞっているに過ぎず、絶えず思考が動揺していたので、みずからの問題意識をかためることが課題でした。

残念ながら、この課題に明確な決着をつけられたとは思いませんが、修士論文を読み直すと、ある種の勢いがあり、自分が書いたとは少し信じがたいような印象を受けます。その勢いは紛れもなく、大学院生活で交流した方々と重ねた議論に由来するものです。ここで得たものを、どうにか自分なりにかたちにしたいというのが、研究終盤の強い思いでした。

修了後、修士課程での生活を振り返って

大学院は研究に没頭する場所だと思って志望し、当然それは誤っていなかったのですが、同時に、様々な場面で活きる力が鍛えられもしました。

仕事にひきつけてみると、たとえば話しながら考え進める能力は大きいです。修士課程に入ってしばらく、発言の正しさにこだわるばかりに、うまく議論に参加できませんでした。この癖は研究室で指摘され大学院で揉まれるなかで、相当改善されました。職場でも正確性は意識しますが、同僚との話し合いからふと出たものが仕事を前進させることは珍しくありません。議論の質は全く異なりますが、私の場合、大学院での経験がなければできていないでしょう。

いうまでもなく、こうした力は研究に熱中した結果ついてきたものです。ただ、そんな副産物も含め、多くの出会いに彩られた修士課程での経験は、間違いなく積む価値のあるものでした。

プロフィール

東京都出身。早稲田大学文化構想学部現代人間論系卒業後、同大学大学院文学研究科哲学コースに進学。在学中はA. ホネットの承認論をテーマに研究。修士論文の題目は「現代日本社会における承認の位置づけ」。修了後は都内市役所勤務。

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