Graduate School of Letters, Arts and Sciences早稲田大学 大学院文学研究科

その他

美術作品を未来に伝える橋渡しになる(美術史学コース:由良濯さん)

私が美術史学コースを志望した理由

学部生の頃から美術館で働きたいと明確に考えるようになりました。美術館の学芸員になるためには、最低でも修士課程の卒業が必要になる場合が多いですから、美術史学コースへの進学を決めました。

美術史学コースの雰囲気、教員・学生などとの交流

美術史学コースでは自学自習の姿勢が大切にされています。学部生までとは異なり、自らテーマを見つけ研究を深めていきます。美術史の研究では実際に作品を見ることがとても重要です。一般に見ることができないような作品も、先生方のご協力で調査させていただく機会を得ることができました。

研究にかけた思い

私の研究テーマは桃山時代に制作された障壁画を中心に狩野派と海北友松の関係を明らかにすることです。大昔に亡くなった絵師が「なぜこの画題を描いたのか」「どうしてこういう雰囲気の絵を描いたのか」「どうしてこのような描き方なのか」といった疑問を考えていくと、注文主や師弟との関係、時代の流行など当時の文化にまで考えが広がります。現代まで大切に受け継がれてきたものが、当時はどのような意味をもっていたのか考えるとタイムスリップしたような気持ちになります。そして、未来へと受け継いでいく橋渡しの役目を果たしていると感じます。

美術館での仕事

私の仕事は大まかに企画展と常設展の準備、所蔵品の管理です。日本近世美術専門として就職したので、専門の桃山時代だけでなく、江戸時代のものも扱います。院生のときに調査や會津八一記念博物館でのアルバイトを通して経験した作品の扱いはとても役に立っています。館に所属する学芸員としてコレクションに関する知識が必要ですから、近代の日本画についても勉強しますし、西洋絵画や現代アートにも興味を持てないとつらい仕事です。学生時代から他ジャンルの展覧会でもできるだけ見に行くようにしていたことが役立っていると思います。特別展では専門と関係のない分野でも展覧会開催のために事務を含めた様々な仕事をこなさなければなりません。さまざまな美術や考古、デザイン、研究の手法に触れられることは、自分の研究を柔軟に見つめなおす視野を与えてくれます。また、一般の方にわかりやすく説明することは研究においても大事なことだと思っています。

愛知県美術館での展示作業中

修了後、修士課程での生活を振り返って

就職してからは院生のときに比べて自由に研究する時間が制限されます。思い返せば、好きな時に調査に行けた院生の頃にもっとたくさん行っておけばよかったと感じます。ただ、院生の頃に様々なところで調査させていただいた経験は学芸員になってからとても活かされています。また、学会発表や論文執筆を早い時期に経験できたことは就職にもアドバンテージになっていたと思います。OBの学芸員の先輩から調査の手伝いや、展覧会図録の仕事をいただいたことはとても大きな経験になりました。修士課程1年の時に参加させていただいた「日本美術史に関する国際大学院生会議」(通称:JAWS)は、私にとって大きな転換点となりました。米国・ハーバード大学でのワークショップ、ボストンやNYの美術館・個人コレクションの調査といった充実した2週間を過ごし、国内外の大学から集まった参加者とは、お互いの研究の進捗やそれぞれの就職先での話など、現在でも連絡を取り、刺激を与えあう仲間のような存在です。院生の頃に勉強してきたことや、友人関係が今の仕事に活きていますね。

プロフィール

兵庫県出身。早稲田大学文学部美術史コース卒業後、早稲田大学大学院文学研究科美術史学コースに進学。在学中は海北友松をテーマに研究。修士論文の題目は「海北友松の初期様式について―旧龍安寺方丈障壁画の筆者に関する考察―」。修了後は愛知県美術館にて学芸員として日本近世美術を担当。

(2021年2月作成)

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