Graduate School of Letters, Arts and Sciences早稲田大学 大学院文学研究科

その他

自分と社会の未来へつながる学びの場をつくる(教育学コース:桑名宏美さん)

私が教育学コースを志望した理由

学部のゼミで教育について議論を重ねることで、学校教育を客観的に見つめ直し、自分の目指す教育の姿を思い描くことができるようになりました。同時に、学べば学ぶほど、それを現実のものにするための知識も経験も足りないことを実感したため、自分の教育観を広げ、手法を学ぶために教育学コースに進むことに決めました。

教育学コースの雰囲気

同じ教育学の研究でも、先生方、先輩方の研究テーマと実践の現場は多岐にわたるため、ゼミは議論する場であり、かつ情報交換の場でもありました。また、学部のゼミにも参加したことで、学部生の新鮮な視点や扱う実践にアイディアをもらうことも多々ありました。他の実践を知り、自分の実践に生かし、それを省察し、また実践に戻るというサイクルで1つの実践に丁寧に取り組むことができたとともに、自分には縁のなかった実践を知ることで、教育とは何かという根本的な問いを深めることができました。先生方も、私たち学生を対等な1人の実践者として尊重し、興味深く実践を見てくださっていることが伝わってきたので、研究や実践に行き詰った時にもその状況を前向きにとらえることができたように思います。

研究にかけた思い

強要される「勉強」が、好きだったはずの「学び」を嫌いにさせてしまう危険性を実感してきました。学校制度をすぐに変えることはできませんが、授業を変えることで生徒たちの学びの質を変えることはできるはずです。他人事であり、やらされるもの以外の何ものでもなかった「勉強」を、自分事であり、自分が豊かに生きていくための「学び」に変える授業づくりがしたいと思ったことが、研究の出発点でした。

修士論文では「地球市民アカデミア」(社会教育団体・大学・運営委員会の協働による通年の市民講座、以下アカデミアという)での開発教育の実践を扱いました。アカデミアでは、参加者は、より良い社会をつくるために、1年を通して、多様な分野で活動をしている人の話を聞き、フィールドワークに出かけ、協働学習で自分が関心のあるテーマを深め、社会に対して自分に何ができるかを考えます。私が参加者として参加した際、新しく学んだことを、立場や年齢の異なる参加者同士が対等に議論したり、思いを共有できることに喜びを感じ、純粋に新しいことを学ぶわくわく感を味わいました。学びを共有できる仲間の存在が、学びを自分事にするきっかけとなり、その仲間に会えるアカデミアがペースメーカーとなって、アカデミアのないときにも関連することを学んだり、新しい分野に挑戦したりできるようになりました。新しい世界を知り、自分の世界が広がる喜び、自分が成長している実感を得られる、アカデミアのような学びの場を学校に作りたいと思い、アカデミアをテーマに研究を進めました。

講座終了後は運営に関わりつつ、豊かな学びの場づくりのために必要なことについて、運営委員同士で議論を重ねました。参加者の学びを広げ、それを日常生活に繋げていくために、参加者同士が良好な関係性を築くためのきっかけを考えたり、講座の内容、付随するフィールドワーク、その後の講座への流れを考えたりすることは楽しく、時に意見がかみ合わず調整に苦労しても、とても充実していました。

アカデミアの運営委員は、参加者の気づきを促し、参加者同士の関係性づくりに気を配りながらも、協働学習者であり、時として学びのロールモデルです。修士論文を書いた時点で、私は、それが参加者の学びの質に影響を与えていると結論づけました。学校でアカデミアのような学びの場をつくるためには、まずは私自身が、教える立場でありながら、同時に対等な立場の学習者であることが生徒に伝わるようにしていく必要があると認識できたことで、学校に戻ってから自分が何をすべきか明確になったように思います。

修了後、修士課程での生活を振り返って

在学中は、目の前のことに追われて、理論を深め、自分の実践を丁寧に振り返ることができるありがたさを認識する余裕はありませんでした。しかし、教員として年数を重ねるほど、大学院での学びが生きていると実感することが増えてきたように思います。

ゼミで、「目的」と「手法」にずれがないかを意識できるようになったこと、他者の研究を聞き論理に無理がないかを考えること、実践から得る気づきを理論的に検証していく習慣は、一人よがりにならず、生徒に伝わる授業作りに欠かせないものとなっています。また、内発的発展論やパウロ・フレイレの対話の概念など、大学院で読み込んだ本は時々読み返して、生徒との関わり方を見つめ直すきっかけにしています。

英語科の教員として、英語が好きな生徒だけでなく、英語が苦手な生徒にとっても、授業時間が豊かなものであるために、どこまで「教員」を抜け出して生徒と対話できるか、日々模索を続けています。その前に進むエネルギー源となっているのが大学院での学びであると感じています。

プロフィール

愛知県出身。早稲田大学第一文学部総合人文学科教育学専修卒業後、早稲田大学大学院文学研究科教育学コースに進学。開発教育をテーマに研究。修士論文の題目は「開発教育におけるファシリテーターの役割とその方法」。修了後は、地球市民アカデミアの運営委員、子育て支援を行うNPOでのインターン、東南アジア青年の船乗船などを経て、2010年から愛知県にある聖カタリナ学園光ヶ丘女子高等学校にて英語科の教員として勤務。

(2021年2月作成)

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