Graduate School of Letters, Arts and Sciences早稲田大学 文学研究科

その他

翻訳者としての土台が作られた修士時代(英文学コース:小林玲子さん)

私が英文学コースを志望した理由

父が英文学を教えていたこともあり、英語の小説や詩は身近にある環境でした。他大学で過ごした学部時代に現代詩の講義を受講し、北アイルランドのノーベル賞詩人シェイマス・ヒーニーに関心を持つように。大学4年の夏休み、アイルランド関連のご著書の多かった栩木伸明先生の研究室を直接お訪ねしてお話を伺い、先生のゼミで北アイルランド現代詩を専攻することに決めました。

英文学コースの雰囲気、教員・学生などとの交流

英文学コースでは他大学の先生がたや博士・修士の学生をまじえた勉強会が開かれ、よその大学院の講義を受けることも奨励されるなど、学ぶ場にはこと欠かない環境でした。人と人のつながりの幅広さ、深さに早稲田のパワーを感じたことを覚えています。何であれ「やってごらん」と後押ししてくだる先生の姿勢にも、たいへん勇気づけられました。

研究にかけた思い

修士論文ではヒーニーがギリシャ悲劇を詩作に取り入れ、我がものとして流用していく過程を追いました。ですがハードルは非常に高く、厳しい修練の日々でした。ハイレベルな仲間が集うゼミでの発表、スケジュール管理、周囲とのコミュニケーション・・・自分の未熟さを痛感するばかりでしたが、20代半ばのあのころに自分の長所と短所を客観的に、徹底的に見つめる経験ができたのは本当に幸運だったと思っています。そのことが、以降の道の選択にもつながりました。

修了後、修士課程での生活を振り返って

修士課程在学時代からウイスキーの専門誌の翻訳を手がけるなどして、少しずつ翻訳の実績を積んでいきました。修了後数年したとき、編集者の方にアイルランド文学を学んだ経歴に注目いただき、ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』猥褻裁判をテーマにしたノンフィクションの翻訳をお任せいただきました(邦題『ユリシーズを燃やせ』にて刊行)。その際は修士時代を共に過ごした仲間たちに、貴重なアドバイスをもらいました。栩木先生にもご報告することができ、私にとっては「もうひとつの修士論文」のような作品です。以降手がけたジャンルは、ノンフィクションから絵本までさまざま。多彩な資料を読んで英語の読解力を磨き、また論文の執筆などを通して日本語の良し悪しを見る目を培った修士時代が、翻訳者としての土台を作ってくれたと感じています。

翻訳は基本的にはひとりで家にこもって、地道にテキストと向き合う仕事ですが、行き詰まったとき「日本の作家の誰それが、同じような場面をあんな日本語で表現していた」、「この場面は美術館で見たあの絵をイメージしたらいいのではないか」などと自分のなかでリンクするものがあると、ふっと前に進む感覚があります。そこで一種のフィールドワークとして、トークイベントや美術展に行ったりすることを大事にしています。そのあたりの意識もまた、「さまざまな分野に『目利き』であれ」と教えられた修士時代に培われたものかもしれません。

コロナ渦でさまざまな選択肢が制限されるなか、若いころの一時期を研究に賭けるかどうか決めるのは、これまで以上に難しい判断になるかと思います。ですが文学研究科という入口はひとつでも、出口はさまざま。私の仲間たちも教員や作家の個人事務所勤務など、それぞれ院生時代の経験を生かして働いています。もちろん、心強い翻訳者仲間もいます。きっと自分の核になる経験ができるはずなので、ぜひ文学研究科で学んでみてください。

プロフィール

東京都出身。国際基督教大学教養学部人文科学科卒業後、早稲田大学大学院文学研究科英文学コースに進学。在学中は北アイルランド現代詩を研究。現在は英日翻訳者としてノンフィクション他の翻訳を手がける。訳書に『ユリシーズを燃やせ』(柏書房)、『世界一おもしろい国旗の本』『妖精図鑑』(河出書房新社)など。

(2021年2月作成)

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