Graduate School of Letters, Arts and Sciences早稲田大学 大学院文学研究科

その他

学ぶことは、自分と向き合うこと(中東・イスラーム研究コース:宮本佳美さん)

私が中東・イスラーム研究コースを志望した理由

昔から言葉に関心がありました。あることを伝えようとしたときに、人を喜ばせることも傷つけることもできる、可能性に満ちている、そんな側面に魅力を感じていたからです。そうして学部時代は、慶應義塾大学の英米文学専攻で英語学を学んでいました。そのような中、学部2年生の時にバックパッカー旅行で訪れたイランで、衝撃を受けました。当時はイスラーム過激派と言われる人々が起こした事件により、イスラーム=悪という言説が当然の如くはびこっていました。しかし実際にイスラーム圏に行くと、安易な等式で言い表せないような人々の暮らしがあることを痛感したのです。この時身をもって、当たり前の恐ろしさを感じました。

その後、イスラームやイランについてもっと知りたいという欲求が生まれ、行きついたのが早稲田大学文学研究科 中東・イスラーム研究コースでした。教授陣が様々な分野に精通している点、開設2年目で新しい試みをしている点、学部生の授業も受講できる点が決め手となりました。私の場合は、大学も研究分野も、学部時代とは大きく変わりました。勿論、学部時代から変わらぬ関心を持っている方もいます。どのような関心も許容してくれる風土が、早稲田の文学研究科にはあります。

修士課程での生活を振り返って

修士課程では、「自分の関心に耳を澄ませ、素直に従い、深めてみる」ことを指針として、日々を送っていました。相変わらず何かを伝えることに関心がありましたが、観察対象をを言葉から物に変え、現代イランの戦争博物館の研究をしていました。2年を通して、基礎的な知識の吸収にはじまり、学芸員資格を取得したり、イランへ現地調査に行ったりと、やりたいと思ったことを行動に移すことができました。

こうして振り返ってみると、関心のある物事を探求することを通して、「自分」自身を探求していた日々であったようにも感じます。惹かれる言葉、はっとさせられる考え方、眉を顰めてしまう物言い、思想...。学ぶことは、自分と向き合うことなのかもしれません。

現在は日系の鉄鋼メーカーで生産管理を担当しています。正直なところ、大学院で研究していた現代イランや殉教、戦争博物館にまつわる知識とは、全く関係のない分野です。ただ、直接的には関係がなくても、「ある物事に対して真摯に向き合うこと」「あらゆることに疑問を持つこと」は、自分が大学院で大切にし培ってきたもので、そういった根本的なものは生きていると思っています。

近頃は、役に立つこととか、すぐに効果が出ることに重きを置く風潮を感じることが少なくありません。修士課程では、そうした急ぎから少し距離を置いて、自分の抱いた疑問に向き合い、当たり前を丁寧に疑うことができました。このようであれたのは、教授・教員皆様の支えがあったからこそです。恵まれた環境に身を置けたことを、今でもかけがえのないことと思っています。

プロフィール

大阪府出身。慶應義塾大学文学部英米文学専攻卒業後、早稲田大学大学院文学研究科中東・イスラーム研究コースに進学。在学中は現代イランの戦争博物館をテーマに研究。修士論文の題目は「殉教者の死の記憶—現代イランの戦争博物館に着目して―」。現在は鉄鋼メーカにて生産管理を担当。

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