私がドイツ語ドイツ文学コースを志望した理由
元々幻想文学に興味があり、学部ではハンス・ハインツ・エーヴェルスという怪奇幻想作家を卒論の対象に選んでいましたが、もう少しこのジャンルについて研究したいと考え、志望しました。
ドイツ語ドイツ文学コースの雰囲気、教員・学生などとの交流
人数が少なかったので学生同士・学部生・博士課程の先輩・先生方と距離が近く、質問や相談などしやすい環境でした。また、学生たちの興味対象が様々だったため良い刺激になりました。
研究にかけた思い
世間一般的には「文学」には難しい・お硬い、といったイメージが纏わり付くということが実感としてあり、ドイツ文学をやっていると言うとそのように思われることも多かったのですが、私は「文学」の持つ不良性や不道徳性が好きなので、ドイツ語文学にも正統的文学史から外れるような作品で面白いものがあるのだ、というところに焦点を当てたいと考えていました。ゲーテやシラー、トーマス・マンやヘルマン・ヘッセといった有名作家たちと並んで、カフカに代表される怪奇幻想文学にも強いのがドイツ語文学の特徴でもあり、そのため、学部時代に研究していた怪奇作家ハンス・ハインツ・エーヴェルスに続いて、修士課程では『ゴーレム』という不思議な小説で有名なグスタフ・マイリンクを研究対象に選びました。
修士課程での生活を振り返って
修士課程への進学を検討している方の中には、「絶対に博士課程に進んで研究者になってやる!」とまでの覚悟を持てずに迷っている方も多いのではないかと思います。社会に出てしまうと、どうしても「役に立つかどうか」という点を避けては通れなくなるので、それを考えると、研究者にならないかも知れないのに「好きだから」というだけの理由で修士課程に進むのは、かなり危険な賭けのように感じるのではないでしょうか。
当時の私も「もう少し研究してみたい」という気持ちだけで進学することにまったく不安がなかったといえば嘘になります。しかし、今修士時代のことを振り返ると、毎週何かしらのテキストを原文で読んで、それについて皆で議論をした日々は一生の中でもう二度と無いであろう本当に貴重な時期でした。
今私は国書刊行会という出版社で勤務していますが、ひとつの作品に真剣に向き合って、それをどう解釈するのかについて自分の意見を話し、他の人の意見を聞いた経験は、新しい出版企画を考える際にも、編集作業をする際にも、著者や訳者の方等と打ち合わせをする際にも活きています。
また、私の所属していたゼミの山本浩司先生はゼミ後にほぼ毎回学生を飲みに連れて行ってくださったので、そこで花咲いた文学談義やその他の雑談もまた今の仕事に繋がっていて、あの頃メンバーに教えてもらった作品や作家で、いつか企画したいと温めているネタもたくさんあります。
何か好きなものに対して真剣になるという体験は、直接的に仕事に結びつかなくても、必ず人生に良い意味で返ってくると信じているので、これからも好きなことを追って生きて行きたいと思っています。
プロフィール
東京都出身。早稲田大学文学部ドイツ語ドイツ文学コース卒業後、同大学院文学研究科ドイツ語ドイツ文学コースに進学。ドイツの怪奇小説家ハンス・ハインツ・エーヴェルス、グスタフ・マイリンクについて研究。在学中に国書刊行会でアルバイトを始め、現在は同社で営業・編集を担当。今年2月に初の自主企画のドラァグ・クイーン写真集『WHY DRAG?』を編集、刊行。
(2021年2月作成)