- ニュース
- 「生きた平和研究」を目指して(社会構築論コース:飯倉芳果さん)
「生きた平和研究」を目指して(社会構築論コース:飯倉芳果さん)
- Posted
- Thu, 08 Oct 2026

飯倉芳果(修士課程(社会構築論コース)在学生)
私が社会構築論コースを志望した理由
私の専門分野は平和研究です。この関心の原点は、幼少期に読んだ戦争体験記にあります。なぜ人は殺し合うのかという疑問は、いつしか戦争と向き合い、平和をつくる人になりたいという夢に変わりました。一方で高校生の時、シリア出身の留学生から「戦争がなくなっても『平和』にはならない。異なる立場の人々との共存まで模索しなければならない」という言葉をもらったことがあります。戦争の不在はあくまで出発点にすぎないのだとすれば、平和とは一体何なのか―そう考えるほどに、この問いにのめり込んでいきました。
その後、戦争だけでなく、あらゆる暴力の不在を志向する平和研究という学問分野に出会ったことで、この疑問を解く一つの手がかりを得ました。また、進学した早稲田大学文化構想学部では、知らぬ間に社会構築論系の授業ばかりを履修していました。当たり前とされてきた社会の前提を問い直し、新たな社会のあり方を“構想していく”という論系の理念が、私が目指す「平和を“つくりだしていく”」姿勢と、どこかで通じ合っていたのだと思います。
コロナ禍での入学となり、思うような学生生活も送れず、すぐに就職することに躊躇いがあった折、偶然にも修士課程に社会構築論コースが新設されることを聞きました。ここで自らの問題意識をより専門的に深めてみたいという気持ちと、少しばかり人生遠回りしてみてもいいだろうという安直な気持ちに背中を押され、進学を決意しました。
社会構築論コースの雰囲気、教員・学生などとの交流
専門分野の異なる教員・学生が集まっていますが、お互いの研究や時に人生のことまで、気軽に言葉を交わせる、和やかな雰囲気があります。議論の中では、自分が当たり前だと思っていた前提に気づかされることも多く、専門の違いが研究を深める刺激になっています。
また、研究と実践の架橋を模索できるのも、本コースならではの魅力です。例えば、「パブリックヒストリー」の授業では、歴史を専門家だけが占有せず、社会へひらくことの可能性を考えましたが、それは学外で取り組んでいたミュージアムでの実践を深める視座にもつながりました。他にも、指導教員の授業では、東アジアの分断や平和をテーマとしたイベントの企画・開催、大学ギャラリーでの展示にも取り組み、何を、どう伝えるかという、机上の学問だけでは得られない気づきを体得しました。
そして、大学院生活を語る上で、指導教員や学びを共にする仲間の存在は欠かせません。指導教員の金敬黙先生は、私にとって、いつでも一歩先を照らしてくれる灯のような存在です。挑戦の機会があれば真っ先に背中を押してくださり、気づけば学内外でさまざまな経験を積むことができました。同期や後輩とも自主的な読書会や研究に関する意見交換、時には自然の中でのリフレッシュをしたりと、互いに高め合いながら、学びを深めています。
研究にかける思い
戦後日本社会は何をもって「平和」としてきたのか、特に東アジアとの関係からこの問いを考えることが研究の中心です。日本にとっての「戦後」は、東アジアの文脈を加えれば、戦争や暴力が続いた時代であり、その残滓は今なお誰かを抑圧する暴力や痛みとして存在します。私たちが享受する「平和」の意味を問い直し、新たな「平和」のあり方を考えています。
また、その手がかりとして、社会の変革を模索してきた市民運動と、そこから生まれた国境を越えた連帯に着目しています。研究対象である国際NGOピースボートは、1982年の歴史教科書問題をきっかけに、若者たちが日本の歴史を自ら検証しようと立ち上がったことから始まりました。かつて日本が侵略・占領したアジア各地への航海と交流を重ね、次第に世界各地での国際交流や平和活動へと広がってきた変遷を、機関誌の分析や聞き取りから追っています。蓄積された人々の営みの意味を理解するのは容易ではありませんが、資料の中で点在していた事象がふと繋がり、輪郭が見えてくる瞬間こそ、研究の醍醐味に他なりません。
修了後の予定
修了後も引き続き、研究の世界に残りたいと思っています。当初から大学院への進学が視野にあったわけではありませんが、社会構築論コースでの学びや指導教員との出会いは、良い意味で私の人生を大きく変えてくれました。たかが2年、されど2年。大学院での学びは、人生を彩る出会いに満ちています。今後も、研究のための研究ではなく、「平和」な社会のための研究と実践のあり方を模索し続けたいです。
プロフィール
埼玉県出身。早稲田大学文化構想学部社会構築論系卒業後、同大学大学院文学研究科社会構築論コースに進学。東アジアの国際関係や戦後日本の平和運動について研究中。修士論文の題目は「戦後日本の平和運動の被害と加害の交錯―国際NGOピースボートを事例に―(予定)」。
(2026年10月作成)
- Links
- 先輩紹介ページ