岡本 茉莉(修士課程(心理学コース)在学生)
私が心理学コースを志望した理由
学部時代は早稲田大学文化構想学部の複合文化論系文化人類学ゼミに所属し、「美味しいとは何だろう」という疑問から、日常の食に関する調査を行っていました。食は普遍的なテーマであり、様々な分野で研究されています。教授や同期からの質問に答える中で他分野に関する知識不足を感じつつ、参与観察を通じて他者の文化を学び、自分の常識を見直すことの重要性を知りました。
参考文献の中でも、特に心理学分野の研究に興味を惹かれたことが大学院で心理学コースを志した大きな理由です。文化人類学では、現場で起こっている現象や今目の前で生きている人々を深く観察し、自分が知らない内に馴染んでいた価値観や常識を洗い出す作業を行います。ゼミ論文執筆に際し、同じような家庭環境においても異なる食の価値観を持つ人々がいるのは何故か、常に疑問を抱えていました。
そして調べる内に行き着いた文献が、個人差に関する心理学研究の論文でした。そこでは様々な概念を仮定し、それらが人の行動にどのような影響を与えているのか考察が行われていました。日常の色々な場面で観察される行動が、例えば性格特性を表すBig Fiveといった概念を通じ繋がっていくことに魅力を感じたのだと思います。「このような視点で物事を捉える心理学の研究が今どのように進んでいるのか、自らその世界に飛び込んで理解したい」と、大学院への進学を決心したのが学部4年生の春頃でした。
心理学コースの雰囲気、教員・学生などとの交流
大学院のことも研究のことも分からず右往左往する私に、ふとした時にヒントを与えてくださるような教授陣と先輩方ばかりです。研究に対する内容は勿論、研究と生活の両立にあたっての成功・失敗経験など、沢山のアドバイスを頂いています。特に学会については分からないことが多かったのですが、困っていることがないか気にかけてくださり、参加登録やポスター作製といった具体的な手順について教えて頂けたことは大変助かりました。
また、研究について議論する内にこの間観た映画の話になったり、アルバイトの話が研究の話に繋がったりと、知識は勿論ウィットにも富んだ方が多いです。学部時代に心理学以外を学ばれていた方や留学して来られた方も多く、毎日が発見と勉強の連続です。皆さん基本的に真面目なのですが、それだけに、ふとした瞬間に見せるお茶目さのギャップが素敵だと感じます。研究室によってもカラーがあるので、進学を考えている方はぜひ興味のある研究室を覗いてみてください。
研究にかける思い
日常生活の中でも、目玉焼きにかける調味料から車内で聴く音楽まで、周囲の選択に驚かされる場面は少なくありません。これらの行動の違いを生むものは何か、研究を通じて少しずつ手がかりを見つけられればと思っています。
多様なバックグラウンドを持つ人々との交流が盛んになる中、他者の価値観を理解することの重要性がよく話題に上ります。一方で実際の物事は多種多様な要素が複雑に絡んで生じており、理解すると言っても一筋縄ではいきません。概念という考え方を挟むことで、ある一つの観点から異なる集団の行動を捉えられるようになるのではないかと考えています。今まで完全に異質だと感じていた相手と同じレイヤー上で接することができれば、よりよい関係を築いていけるかもしれません。
学びを続けていく中で、「先人がこれだけ研究しても分からない複雑なこと、どんなに頑張っても答えには近づけないのでは」という不安もありますが、技術の進歩や情報の共有によって、研究手法も多様化しています。知らないことの多さを痛感する毎日ですが、新たな知識との出会いを楽しんで、今できる分析を進めていきたいです。
修了後の予定
修了後は引き続き博士後期課程へ進学予定です。いつも支えてくださる友達、研究室の方々や家族には感謝しています。そんな気持ちも研究や日々の活動を通して伝えていければと思います。現在も含めて金銭的な不安はありますが、やり繰りの過程も含めて楽しんでいきたいと思っています。
プロフィール
埼玉県出身。早稲田大学文化構想学部複合文化論系卒業後、早稲田大学大学院文学研究科心理学コースに進学。修士論文は食行動における価値観をテーマに執筆予定。
(2023年3月作成)