瀬谷公基(修士課程(中東・イスラーム研究コース)在学生)
私が中東・イスラーム研究コースを志望した理由
私は大学入学前に陸上自衛隊高等工科学校という陸上自衛隊の高校に所属していました。陸上自衛隊に所属する中で国際協力に関心を持ち始めたことから、陸上自衛隊高等工科学校卒業と同時に陸上自衛隊を退職し、2016年に早稲田大学法学部に進学しました。大学進学後、テロ組織であるイスラム国に対して果敢に抵抗するクルド民族の存在に興味を持ち始めました。そのような興味からイラク・クルディスタン地域の状況について調べていく中で、当地では難民問題などの様々な人道上の危機が発生していることを知りました。イラク・クルディスタン地域で発生している人道上の問題を知れば知るほど、気がついた時には、一人間としてこのような人道上の危機に対して何かしらの貢献をしたいという気持ちが私の中で湧いていました。
このような気持ちを出発点として私は法学部在学中を通じて、イラク・クルディスタン地域における難民支援活動と在日クルド人の定住支援の活動に参加していました。この活動の中でクルド民族のコミュニティ構造、特にイラク・クルディスタン地域のコミュニティの構造をより学びたいと思い、大学院進学を検討し始めました。様々な大学院を検討する中で、教授が様々な分野に精通していること、学部の授業を受講できること、海外留学を推奨していることなどの点から早稲田大学文学研究科中東・イスラーム研究コースを進学先として選択しました。
中東・イスラーム研究コースの雰囲気、教員・学生などとの交流
中東・イスラーム研究コースは挑戦がしやすい自由闊達な場所だと感じました。自分の興味、関心、問題意識を受け止めてくださる教員と環境が揃っています。私も指導教員の先生には様々な面で相談に乗っていただきました。また、コース全体の雰囲気は非常に和やかで、教員・学生から様々な分野の話を聞ける機会に恵まれており自分の世界が広がりました。
研究にかける思い
私はイラク・クルディスタン地域の政党と地域社会との関係についての研究を、当初はイラク・クルディスタン地域でのフィールドワークを基にして行う予定でした。しかし、実際に当地においてインタビューをしていく中で問題意識を抱いたことから、SNS上のデータを用いた研究手法に変更しました。研究と修士論文を執筆する中で説得力のあるデータ収集ができているか、客観性のあるものか、人々から興味を持ってもらえる説明はできているかなど悩むことは多々ありましたが、私の研究を通じてイラク・クルディスタン地域のことを少しでも多くの人に興味を持ってもらいたいと思いながら研究を行いました。
修了後の予定
私は修了後の4月から経済産業省本省で総合職の行政官として勤務する予定です。このような進路選択の背景として2つほどの原体験があります。1つ目はコース在学中に、イラク・クルディスタン地域への留学を通じて日本製品・製造業が日本と様々な地域、民族集団との架け橋となっていることや、衣食足りて礼節を知るということが平和構築において最も重要だと学んだからです。2つ目は人々にとって故郷は大事だということを学生・教員の研究発表・レクチャーを通じて学んだからです。このような2つの原体験から私は日本の経済・産業の強みをプロデュースしつつ、人々の当たり前の日常を守ることをパブリックセクターから行っていきたいと思い、総合職の行政官として経済産業省で勤務することを志望しました。大学院での学びが 仕事に直結することは多くはないかも知れませんが、研究や研究指導を通じて 、研究対象の人々・地域に対して敬意を払いつつ、色眼鏡で見ないといった 人や対象に向き合う姿勢などの大学院で得た学び・知見は今後も大切にしていきたいと思っております。
プロフィール
神奈川県出身。早稲田大学法学部卒業後、早稲田大学大学院文学研究科中東・イスラーム研究コースに進学。在学中はイラク・クルディスタン地域の政党と地域社会との関係をテーマに研究する傍ら在学中に国家公務員総合職試験に合格。修士論文の題目は「S N S上の認知の隔たりと共通項が南クルディスタン社会へ与える影響」(予定)。
(2023年2月作成)