Graduate School of Letters, Arts and Sciences早稲田大学 大学院文学研究科

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演劇の早稲田に学びて(演劇映像学コース:埋忠美沙さん)

埋忠美沙(お茶の水女子大学 准教授)

 

私が演劇映像学コースを志望した理由

子どもの頃から歌舞伎をはじめ演劇が生活の一部にあり、高校の部活動で舞台制作に熱中したことをきっかけに、演劇に携わる仕事をしたいと思うようになりました。大学生活を送るなかで学問を通じて歌舞伎に関わる決意を固め、大学院進学を考えた際、早稲田大学以外の選択肢は思いつきませんでした。坪内逍遙以来の演劇研究の伝統はもちろん、それまでに読んだ演劇書の著者略歴に、しばしば「早稲田」と記されていたためです。構内に演劇博物館があり、資料に触れやすい環境であるというのも大きな魅力でした。

演劇映像学コースの雰囲気、教員・学生などとの交流

何といっても演劇を研究するうえで、これほど恵まれた環境はないと思います。在学中は古典芸能だけでも内山美樹子先生、古井戸秀夫先生、和田修先生がおられ、世代が変わり児玉竜一先生が加わり、先生方から豊かな知識を惜しみなく与えていただきました。進学当初は、「果たしてこれは日本語なのか……?」と思うほどに難解な話についていくのもやっとでしたが、ゼミ仲間と自主勉強会で切磋琢磨し、先輩方にサポートしていただきながら、研究者としての基礎を培うことができました。

コースには、様々なバックグラウンドを持つ人々が、演劇や映画を愛するという共通点だけで集っていました。独自の美意識と確かな批評眼をもちながら、互いの「好き」を尊重する雰囲気は心地よく、授業や研究の合間にはコースの仲間たちと演劇や映画の感想を語りあうのが日常でした。どんなジャンルであっても必ず専門家がいたため雑談一つとっても刺激的で学びがあり、それは今思い出しても幸福な時間です。

研究にかけた思い

演劇の研究には、様々な資料を駆使してわずかな手がかりを辿る緻密さと、失われた舞台をいわば脳内再生させるための豊かな想像力、この両方が必要です。決して正解とゴールがない研究に、挫けそうになったことは一度ではありませんが、不思議なことに、いつもそうしたタイミングで素晴らしい舞台と出会い、研究の活力を得てきました。対象を好きなだけでは研究はできませんが、やはりその思いこそが原動力なのでしょう。

「内体の芸術ってつらいね。すべてが消えたよう」とは、十八代目中村勘三郎の葬式における十代目坂東三津五郎の弔辞ですが、現れた先から消えてゆく上演と技芸を留められることを、これからも微力ながら研究によって示し続けたいと思っています。

修了後、博士後期課程での生活を振り返って

ゼミ活動、研究会や学会、調査旅行、アルバイト(先生や先輩に紹介いただきました)など、全てが研究に結びついた学びの日々でした。さらに博士後期課程在学中から最近までの長きにわたって、学内で様々な仕事に従事したのも貴重な経験です。例えば、助手をつとめた演劇博物館を拠点としたグローバルCOEプログラムでは国内外の一流の演劇研究者の活動に間近に接し、講師をつとめた演劇映像コースと演劇博物館では学生との交流や多種多様な博物館業務を通じて研究とは異なる形でディープな早稲田演劇に浸りました。こうした若手のポストが学内に多くあるのは、研究者を目指すにあたって恵まれた環境だと思います。

現在の勤務先では、授業の他に、伝統芸能の魅力を若い世代に伝えるためのプロジェクト(伝統芸能×未来プロジェクト)の運営を担当しています。伝統芸能の演者や研究者、さらに関係する業界の方々をゲストにお迎えして大学内外に向けて様々なイベントを開催していますが、多様な人が集う早稲田における様々な経験が、その活動の礎になっていると日々感じています。

プロフィール

東京都出身。日本女子大学人間社会学部卒業後、早稲田大学大学院文学研究科芸術学(演劇映像)専修(現演劇映像学コース)に進学。博士(文学)早稲田大学。博士論文の題目は「黙阿弥の研究――江戸の善人と悪人」。博士後期課程在学中に、早稲田大学演劇博物館グローバルCOEプログラム研究助手をつとめる。その後、日本学術振興会特別研究員PD(東京大学)、早稲田大学文学部演劇映像コース講師(任期付)、同大学演劇博物館講師(任期付)を経て、現在、お茶の水女子大学准教授。著書に『江戸の黙阿弥――善人を描く』(春風社、2020年)。

(2022年3月作成)

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