張文菁(愛知県立大学外国語学部 准教授)
私が中国語中国文学コースを志望した理由(研究者を志した理由)
大学卒業後は社会人として勤務したものの、人びとの考え方や社会的規範を一転させられるほどの力をもつ人文研究に魅力を感じ、研究者を志しました。私が早稲田大学大学院文学研究科中国語中国文学コースを志望した理由は、なんと言っても通俗小説の研究ができるからです。文学に限らず、通俗小説や映画、ドラマなど文化研究まで熟知する博識な教授陣のもとなら、よい研究は可能だと考えました。
中国語中国文学コースの雰囲気、教員・学生などとの交流
中国語中国文学コースは、とにかく教員の面倒見が素晴らしいです。院生時代の研究指導の先生は、ゼミ合宿の企画だけではなく、中国の北京や上海、天津などで開催されるシンポジウムに参加する機会まで作ってくださいました。院生にとって海外で研究発表できる体験は非常に貴重なものでした。また、院生同士でも自主的に勉強会を開くなど研究の意欲が高く、刺激の多い環境に恵まれました。
博士後期課程修了後、任期付きの講師として在職した3年間でもっとも印象が深かったのは、夏休みに行われる学部生を対象とする2泊3日の合宿です。学部生だけではなく、引率した教員と院生がともにソフトボール大会や中国語演劇、BBQなどのイベントを行ったことは、今でも思い出すほど良い体験でした。
研究にかけた思い
研究は、自分の疑問に答えるために自分と向き合う作業です。先行研究を手がかりに資料をかき集め、解読と分析を進めながら、ひたすら自問自答を繰り返します。孤独な作業ですが、独りよがりにならないように常に客観的に自分の考えを見つめ直す必要もあります。しかし、このような過程を経てようやく論文として発表できたとき、すべての苦労が報われるほどの達成感があります。
修了後、博士後期課程を振り返って
現在の仕事の大きな糧となった中国語中国文学コースでの学びはたくさんあります。そのなかでも研究指導を挙げたいと思います。今でもよく覚えているのは、先生が以前早稲田大学の近辺にたくさんの古本屋があったという話をされたときのことです。古本屋巡りを研究のあり方に例え、「たくさんある古本屋を廻り、そのなかから自分にとって大事な本をようやく掘り出すようなものだから、研究はたくさんの本を読まないと見えてこない」という。間口の広い先生だからこそ、学生のやりたいことを活かしつつ、さらに磨きをかけて完成形に持って行くことができるのだと思います。研究者、そして指導者として非常に影響を受けました。
プロフィール
台湾出身。1996年慶應義塾大学哲学科を卒業後、大栄貿易公司、チャイナエアライン(中華航空)の勤務を経て、2001〜2003年慶應義塾大学大学院文学研究科中国文学専攻修士課程。2003年〜2009年、早稲田大学大学院文学研究科中国語中国文学コース後期博士課程。博士論文の題目は、「1950年代台湾通俗小説研究――文化政策・読者・文壇・出版からのアプローチ」。在学中の2006年〜2009年、早稲田大学第二文学部表現・芸術専修助手を担当。その後、2015年〜2018年、早稲田大学文学学術院講師(任期付)を経て、2021年より愛知県立大学外国語学部准教授。専門は中国語圏通俗小説、台湾文学、中国近代文学。著書に『通俗小説からみる文学史――1950年代台湾の反共と恋愛』(法政大学出版局、2022年)がある。