3月25日
文学研究科長 高松寿夫
この3月、課程を修了なさる皆さん、おめでとうございます。
今後も研究を続けて行く方、就職先での勤務が始まる方、出身国に帰国なさる方――4月からの新しい生活は様々ですが、それぞれの現場で、存分に活躍なさることを期待してやみません。
記念すべきこの修了の時期が、このような不安な状況と重なり、一堂に会して喜びを共有し合い、別れを惜しむ機会が得られなくなってしまったことは、残念でなりません。
つい数箇月前、隣国でなにか新しい感染症で騒ぎになっているらしいと、対岸の火事を眺めるようにニュースを見聞きしていたことが、あっという間に世界的な広がりで深刻な事態に至ってしまったことに、改めて地球は狭くなったのだという実感を抱きます。ことは保健衛生の問題にとどまらず、すでに経済的な影響は顕著に現れてきていますし、やがて政治や文化の面にも及ぶことでしょう。まったく気が滅入りますが、一方で、ひょっとすると世界史的な転換点にもなるかもしれないこの状況を、文学研究科の課程で培ったそれぞれの専門性に基づく見識と分析力をもって、ぜひしっかりと見届けてもらいたいとも思います。
近い将来、今回のこの特異な思い出と、それぞれの観点からの分析を語り合う機会があることを期したいと思います。