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あの日の「知りたい」から、その先へ(西洋史学コース:高橋謙公さん)
- Posted
- Wed, 21 Oct 2026

高橋 謙公(修士課程(西洋史学コース)修了生)
私が西洋史学コースを志望した理由
振り返ってみると、西洋史学コースに進学した理由は、大きく二つありました。一つは教員免許状(専修)の取得でした。もう一つは、学部生時代に受けていた(いや、受けるはずだった)講義でした。シラバスをよく見ていた私は、とある講義にて、中世地中海世界とシチリア島について扱う回を楽しみにしていました。ところが、いよいよその日を迎えると、始まったのは翌週に予定されていた内容でした。そのことで、かえって「その内容を知りたい」という気持ちが強くなり、結果的に大学院進学への意欲につながったのだと今では思います。また、蔵書の充実ぶりや図書館のシステムなど、研究を進めるための環境に不安がなかったことも、進学を後押ししてくれました。
西洋史学コースの雰囲気、教員・学生などとの交流
各ゼミでは、教員の専門とする時代や地域を軸にしながらも、学生の自由な発想や思考を尊重する雰囲気がありました。自分の関心や疑問を大切にしながら、先生方や学生同士で意見を交わし、研究を深めていける環境だったと感じています。
進学当初、歴史研究はひとりで調べ、考え、進めていくものだと思っていました。しかし、ゼミでの質疑やコース室での対話、合宿やゼミ後に近くのお店で「意見交換」を重ねるなかで、人との対話を通じて発想が広がり、考えが深まることを実感しました。自分では当たり前だと思っていたことを問い直したり、うまく整理できていなかった考えが、人に話すことで明確になったりすることもありました。それは時にゼミの垣根を越え、さらには大学の垣根を越えて交流が広がることもありました。その中で交わされる何気ない会話が、研究を考えるヒントになり、そうした日々の交流も大切な学びの場でした。
史料や文献にひとりで向き合う時間と、そこで考えたことを誰かと話し合う時間。その両方が、研究を進めるうえで大切なのだと、このコースで学びました。先生方や先輩・同期・後輩との対話があったからこそ、研究の楽しさを感じ、研究対象への興味や関心をより深めることができたのだな、と今あらためて感じています。
研究にかけた思い
しかし、進学し、テーマを絞って研究を進めるなかで、まず「わからないことが多すぎる」という壁に直面しました。概要をつかもうにも、国内で参照できる文献は少なく、海外の文献を検索しては、ダウンロードしたり、取り寄せたりする日々を繰り返しました。早稲田大学の充実した図書館や学術情報検索の仕組み、さらには図書購入への手厚い支援には、本当に助けられました。
研究対象の特性上、言語の壁も高く、英語、イタリア語、フランス語、スペイン語、ドイツ語の文献を読み込む必要がありました。さらに、必要なラテン語史料を探し出し、入手し、翻訳しながら分析することも求められました。進学当初は、こうした作業を自分がこなしていけるのか、深く考えていたわけではありません。それでも、目の前の文献や史料に一つひとつ向き合う日々を重ねるうちに、いつの間にか、教員免許のことよりも、研究を深めることばかり考えるようになっていました。
「学ぶ」から「伝える」へ
現在は大学で、研究と教育の両方に携わっています。振り返ってみると、西洋史学コースで身につけたものは、特定の時代や地域についての知識だけではありませんでした。史料や文献を読み、そこから問いを立て、自分なりの答えを組み立てていくこと。そして、その考えを他者との対話のなかで問い直していくこと。こうした研究の進め方そのものが、現在の仕事の土台になっています。
学生を指導する立場になった今、かつて先生方が自分の関心や疑問を尊重してくださったことの意味を、以前より強く感じるようになりました。学生が抱いた素朴な疑問を出発点に、一緒に考えながら、その「知りたい」を深めていくことも、現在の私の大切な仕事の一つです。
正直なところ、在籍していた頃は、その先の進路について深く考えておらず、コース室で研究をしたり、雑談をしたりする時間が楽しく、日々ただ「知りたい」ことを追いかけていました。もちろん、不安になることもありましたし、先輩や先生方をさぞ不安にさせていたことと思います。それでも、あの時の「知りたい」という思いから始まった私の研究が、どのような形であれ、今度は誰かにとっての「知りたい」につながれば、嬉しく思っています。

プロフィール
東京都出身。早稲田大学文学部西洋史コース卒業後、同大学大学院文学研究科西洋史学コースに進学。その後、同博士後期課程を修了。2023年度より岡山大学学術研究院社会文化科学学域(経済)准教授に就任。在学中はシチリア王シャルル・ダンジューと地中海世界との関係をテーマに研究。修士論文の題目は「中世後期地中海世界におけるシチリア史を巡ってーシャルル・ダンジューとシチリアの晩禱事件を中心にー」。
(2026年10月作成)
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