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「ロシアの魂」を追って(ロシア語ロシア文化コース:林愛子さん)
- Posted
- Thu, 08 Oct 2026

キルギスの首都・ビシュケクからの風景
林 愛子(修士課程(ロシア語ロシア文化コース)修了生)
私がロシア語ロシア文化コースを志望した理由
学部時代に出会ったロシア思想は、常識や固定観念を覆す不可解さに満ちている一方で、同時に自分の生とつながっているような普遍性や親近感も感じられる、近くて遠い存在としか言いようがないものでした。この独特な感覚を自分の言葉で整理し、明確に定義づけしてみたい、と考えたためです。
学生時代の私にとって、ロシアの不可解さと親近感を最も鮮烈に体験できる場がドストエフスキーの小説でした。ドストエフスキーを深く読み解くことで、自分と「ロシアの魂」にある隔たりの正体を理解できるのではないか、と思っていました。
ロシア語ロシア文化コースの雰囲気、教員・学生などとの交流
私は出不精かつ臆病で、最低限の講義やゼミにしか顔を出しませんでしたが、今思えば露文の院生の特権をもっと活用すればよかったな、と反省しています。
少人数のコースですが研究テーマは実に幅広く、第一線で活躍される先生は勿論、さまざまなバックグラウンドの方がいらっしゃるので、今後進学される皆さんは、貪欲に先生・先輩方の助言をいただき知見を深めることをおすすめします。
研究にかけた思い
ドストエフスキーの有名な五大長編のうち『白痴』を研究対象にしたものの、比較的ポピュラーかつ幅広い解釈の可能性があるテーマを選んだため、研究の軸を探すことに最後まで非常に苦労しました。
先生や先輩の背中を追いながら、当然のように博士後期課程へ進学するつもりでいましたが、自分なりに一つの着地点を見つけた(と思いたい)修士論文も中々の難産で、これ以上のアウトプットを続けていくことは難しいと思い、進学は断念しました。
「ロシアの魂」は自分の力量を超えた遥か遠くにあり、元々思い描いていたキャリアとは異なる道に進みましたが、修士課程の期間を自分の興味関心にすべて注ぎ込めたこと、それをもって研究者としての力試しができたという観点から、大学院への進学を決めたことに後悔はなく、贅沢な時間を糧に潔く次のステップに進むことができたと思っています。
コースでの学びとキャリア
研究のサブスタンスが実務に直結しにくい分野において、自分の研究や努力をどう社会に還元できるのか、悩む方も少なくないと思います。
私自身もその一人でしたが、例えば自分と異なる社会背景、価値観や文化の存在を前提としたうえで、その一つひとつを丁寧に分析し、点と点をつなげて合理的な理解を構築していく、という、外国文学をアカデミックに読む際に求められる姿勢は、社会人として働く中でも確かな汎用性を持つのではと思います。
また、私の場合はありがたいことに、旧ソ連圏の在外公館専門調査員、JICAの任期付職員、技術協力プロジェクト専門家など、原典やロシアで出版された論文を読むために続けたロシア語が強みになるお仕事を多くいただけています。第2外国語が研究テーマの入口になった、というような方は、語学力のブラッシュアップもキャリアの一助となるかもしれません。
プロフィール
早稲田大学文学部ロシア語ロシア文学コース卒業後、同大学大学院文学研究科ロシア語ロシア文化コースに進学。在学中は19世紀ロシア文学をテーマに研究。修士論文の題目は「『白痴』研究―ロシアの相対化の試みとして」。
(2026年10月作成)
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