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さまざまな「出会い」を経てたどり着いた大学教員という職業(西洋史学コース:糸隆太さん)

さまざまな「出会い」を経てたどり着いた大学教員という職業(西洋史学コース:糸隆太さん)
Posted
Thu, 08 Oct 2026

糸 隆太(修士課程(西洋史学コース)修了生)

私が西洋史学コースを志望した理由

小学生の頃から歴史が好きだったので、中学時代、高校時代も歴史小説や歴史に関わる映画に触れる機会が多かったと思います。特に大きな転機となった作品は、2000年に公開された映画『グラディエーター』です。当時まだカエサルやアウグストゥスのような教科書に太字で書かれる重要人物くらいしか知らなかった私は、映画で描かれる「ローマ帝国」に強い憧れを抱いたのです。また、それと同時になぜこれほど壮大な国家が滅びてしまったのか、ということに疑問を感じるようになりました。いま振り返ると、このようなローマ帝国への憧れと帝国滅亡に対する疑問が私を西洋史学コース、さらに大学教員(研究者)の道へ導いたのかもしれません。

西洋史学コースの雰囲気、教員・学生などとの交流

早稲田大学に進学した頃の私は大学教員という職業に漠然としたイメージしかなく、大学院修士課程、さらに博士後期課程に関する知識はほとんどない状態でした。そんなある意味、世間知らずの私を小林雅夫先生は温かい目で受け入れてくださり、大学院へ進学して古代ローマ史を研究するために必要なことを一つ一つ教えてくださいました。

小林先生がご退職されたあとは、井上文則先生にご指導いただき、修士論文、そして博士論文を早稲田大学に提出することができました。お世辞にも出来の良い学生とはいえなかった私を博士という学位まで導いてくださった井上先生のご指導は何物にも代えがたい財産であり、自らの研究および現在担当する大学の講義・ゼミにおいても大いなる指針となっています。

最後にもう一つ、コース室の存在を抜きにして、西洋史学コースの雰囲気を語ることはできないと思います。コース室には古代史から現代史まで専攻を問わず、さまざまな院生が頻繁に訪れていたこともあり、アカデミックな議論から当時流行していた事柄に関する話題まで本当に多種多様なことについて語り合う場になっていました。

研究にかける思い

ローマ帝国滅亡の要因を探求したいと、大学院へ進学した私でしたが、修士論文では古代ローマの牧畜(畜産業)について考察しました。古代ローマは本質的に「農業(農耕)国家」であると考えられた結果、役畜としての家畜の役割が重視され、牧畜の重要性は相対的に低く評価されてきました。私は、このような通説に疑問を抱き、牧畜の評価および「農業国家」という伝統的なローマ共和政期像の見直しを試みたのです。

具体的な考察にあたっては、牧畜と国家的規制あるいは政治・政策との関連を分析することに重きを置きました。特に、リキニウス・セクスティウス法やグラックス兄弟の改革などのような一般に知られる法律や改革を再検討し、それらが実は国家による牧畜への干渉でもあったことを指摘できたことが修士論文における重要な成果の一つかもしれません。

ところで、私の現在の研究テーマは古代ローマの食生活史になりますが、修士論文を書き終えたあと、牧畜という生業に深く関連づいた肉食、さらにはより広い意味での食という論点に至ったことを考えると、修士論文が大きな転機になったことは間違いないと思います。

コースでの学びとキャリア

大学教員という職業に大学院での学びは直結していると思いますが、私は主に文化を扱う授業を担当していることもあり、その中には例えば古代から現代までのヨーロッパの食文化について話す講義が含まれます。西洋史学コースには時代や地域を幅広くカバーできるだけの先生方が所属されており、そのおかげで私は専門分野以外にもさまざまな知見を得ることができました。講義の構成などを考えていく際、このような「学び」に何度も助けられています。

これまでに「出会う」ことのできた作品、先生方、コースの友人たちのおかげで、私は現在の職業までたどり着くことができました。学生たちには常々、私もまだ道半ばということを話しているのですが、今までの「出会い」に感謝しながら、これからも研究と授業運営に精進していきたいと思います。

プロフィール

埼玉県出身。早稲田大学第二文学部歴史・民俗系専修卒業後、同大学大学院文学研究科西洋史学コースに進学。修士課程では、古代ローマの牧畜をテーマに研究。修士論文の題目は「ローマ国家と牧畜―共和政ローマにおける牧畜の管理とその実態」。その後、同博士後期課程へ進学。早稲田大学文学学術院助手、早稲田大学等非常勤講師を経て、2023年度より福岡女学院大学人文学部准教授に就任。

(2026年10月作成)