自己紹介
「自分は自分の生き方やあり様を自分で考えてこなかった」
これは私が早稲田大学3年生の時、アメリカ留学中に北米をあちこち旅しながら気づいたことです。皆さんはなぜ大学に進んだ、または進もうと思っているのでしょう。
私は「そういうものだと思っていたから」でした。いわゆるレールに乗っていて、一度でも疑い、真剣に考えたことはありませんでした。レールから降りるのは不安で怖く、なぜ大学に進むのかを考えなかったというよりも、考えたくなかったのかもしれません。自分がどうあるか、も、特に留学前までは人の目を気にしたり、世間的にはこうだろうと思う枠に自分をはめようとしたりしていた気がします。

暮らしている南魚沼市。大きな光景が見られる
異なる価値観との出会いは刺激的です。自分の「あたりまえ」が崩れ、世界が少し広くなった気がしてきます。旅や出会いを通した様々な体験が、今の私自身を作っていると同時に、関心や研究にもつながっています。
私は新潟県の雪国に生まれ、今はそこから大学に通っています。その地に生まれ育って今の私があり、その地に暮らす人々との関係性と共に大切にしたいことです。そう思うようになったのも、地球上様々な場所への旅の経験、先住民族の人たちとの生活からです。
自然の中での旅や、そこに暮らす人々との出会いも多かったことから、「人と自然の関係」に関心を持ち、その文化的側面や身体性、サステナビリティを念頭に、伝統知や地域づくり、体験教育、持続可能性教育へと関心はつながります。

アオテアロア(ニュージーランド)、マオリのマラエ
特に長い時間をかけてきた「地域に根ざした教育(place and community-based education)」は、まさに留学時に気づいたこととつながっていたと今は思います。この概念に出会ったのは、アラスカの先住民たちが、教育を自分たちの手に取り戻そうと動いていたことからでした。先住民にとってだけでなく「地域に根ざした教育」は、個々人にチョイスを与え、「自分で考えて生きる」ために重要なのです。これは日本でも、学びの場づくりや青少年の成長を考える上でも大切な概念だと思います。

アラスカ州の村で地域に根ざした教育活動
これからやってみたいと準備中なのは、伝統知×気候危機、ミクロネシア連邦の小さな島での気候危機に伴う社会環境的な現状調査、自然体験の生態学的意義、そして自然との関わりと健康、のようなことです。
私は2021年度までの5年間、早稲田大学文化構想学部で教員をしていましたが、2023年度から再び文化構想学部に戻ってきました。
COVID-19で閉じ込められていた時期から解放され、国内外でたくさんの人たちとまた出会えるようになりました。すでに大学での出会いが刺激的ですが、これからもっと世界を広げられるとワクワクしています。
プロフィール
たかの たかこ。早稲田大学第一文学部卒業、同大学院政治学研究科およびケンブリッジ大学修士課程修了。エジンバラ大学Ph.D。(特活)エコプラス代表理事。立教大学客員教授、早稲田大学留学センター教授を経て、2017年度~2021年度早稲田大学文化構想学部教授。2023年度より現職。
野外・環境教育、地理学や人類学など分野横断的な実践的研究を進める。アマゾン川下りや北極海犬ぞりとカヌー横断など、地球上各地での自らの遠征や少数民族との旅の経験を踏まえ、90年代初めから「人と自然と異文化」をテーマに、地球規模の教育プロジェクトの企画運営に取り組む。体験からの学びを重視し、「地域に根ざした教育」の重要性を提唱している。社会貢献活動に献身する女性7名に向けた「オメガアワード2002」を緒方貞子さんや吉永さゆりさんらと共に受賞。2016年春期早稲田大学ティーチングアワード受賞、2017年ジャパンアウトドアリーダーズアワード(JOLA)特別賞、2018年国際キャンプ協会バタフライアワード、2019年GLSIドラゴンフライアワードほか。環境ドキュメンタリー映画「地球交響曲第7番」に出演。(公社)日本環境教育フォーラム専務理事、(財)日本自然保護協会参与、一般財団法人全国山の日協議会評議員など。
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