自己紹介
私は「科学技術の社会的受容」をテーマにして、人工知能や生命科学といった科学技術の発展にともなう倫理的な問題や、それらの科学技術に対して専門家ではない人々がどのような態度を持つのかということを研究しています。
最先端の科学は専門家以外の人々には理解が難しいものですが、科学の進歩はすべての人の生活に影響を与えるもので、決して他人事ではありません。自動車の運転がすべて自動化されたとき、交通事故の責任を誰が負うことになるのか。遺伝子操作や脳細胞の培養といった技術をどのように利用していくべきか。このような問題は、単に科学の問題というよりも、私たちがどのような社会に暮らしたいかということに関わっているはずです。そのため、法学、哲学、心理学などさまざまな観点から、科学技術と社会の関係が議論されています。
とはいえ、私も最初から一貫した見通しがあって、上に書いたようなことを考えてきたわけではありません。
高校生のころは漠然と文学っぽいことに興味があって文系に進み、大学に入ってからたまたま履修した授業がおもしろかったので社会心理学を専攻しました。大学院に入ったころ、ちょうど人工知能が注目を浴びていたので実験のネタに選んでみたら、そのままのめり込んで博士論文のテーマになりました。大学院を出た後、ちょうど哲学の研究室で社会調査ができる人を探しているというので雇ってもらい、知識ゼロだったのに生命倫理学の研究をやることになりました。
振り返ってみると偶然に大きく左右されながら、その時々で興味のあることをやっていたのですが、その積み重ねの中で自分の思考が整理されていったというのが正直なところです。これからも同じように、おもしろいと思えることを研究していくことになるのだろうと思います。

学会で訪れたアトランタにて、学会会場の近くにあったオリンピック公園の様子

同じくアトランタにて、学会の合間に行ったコカコーラ博物館。日本のロボットが展示されていたので思わず写真を撮りました
私の専門分野、ここが面白い!
科学技術と社会という研究対象ゆえに、さまざまな研究分野が関連する、いわゆる学際的な研究ということになります。私の専門は社会心理学ということになっていますが、「○○学だからこういうことをやる」という縛りはなく、自分が興味を持ったこと、疑問に思ったことは研究のネタにできるのがおもしろいところだと思います。
また、人工知能や生命科学の進歩について知れば知るほど、今まで自分が疑問に思ってもいなかったこと――たとえば知能とは何か、人間と機械の違いは何か、など――がよくわからなくなっていく感覚もあります。勉強や研究をすればするほど、新しくやることが出てきて、飽きることがない仕事です。
プロフィール
たにべ てつし。1989年広島県生まれ。東京大学文学部、同大学院人文社会系研究科修士課程、博士課程(2021年博士課程を単位取得退学、同年に博士(社会心理学)学位取得)。埼玉県立大学保健医療福祉学部助教などを経て、2023年より現職。
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