School of Education早稲田大学 教育学部

【地理歴史専修】「ポルトガル」とは、どんな国? -「地誌学Ⅱ」科目紹介

科目概要

  • 担当教員:池 俊介 教授
  • 科目名 :地誌学Ⅱ
  • 学科専攻専修:社会科地理歴史専修
  • 科目区分:1年必修

地域の全体的な特色を探り、地表空間の多様性を学ぶ。

地球上の自然環境はじつに多様です。砂漠のような乾燥地域もあれば、河川がつくった肥沃な平野もあります。その複雑な自然環境を舞台にして、人間の活動はさらに多様な地表空間をつくり出してきました。地理学は、このように生み出されてきた地表空間の多様性を明らかにするだけでなく、その違いが生じた要因を説明することに努めてきました。

この授業の名称にもなっている「地誌学」は、それぞれの具体的な地域について総合的にアプローチして、地域の特色を明らかにすることを目的としており、その成果は「ヨーロッパ地誌」や「日本地誌」といった形にまとめられます。おそらく「地誌学」は、多くの皆さんが「地理」という言葉からイメージするものに最も近い地理学の分野だと思います。

しかし、残念ながら「地誌学」には各地域の自然・産業・文化などに関する細かな知識をまとめるだけの退屈な学問という誤ったイメージがあるようです。もちろん、本来の地誌学はそのような内容のものではなく、対象とする地域をより広い地域の中で相対的に位置づけ、地域の全体的な特色を明らかにすることで、的確な世界像の形成をめざすダイナミックで魅力的な分野なのです。この授業を通じて、そうした地誌学の魅力を少しでも伝えることができればと考えています。

同じ農業景観でも、世界の各地で異なる特徴が見られます。
(上)高知県津野町の貝ノ川棚田
(下)ポルトガル南部のアレンテージョ地方

現在のポルトガルの地域像を描く。

「地誌学Ⅰ」では、地誌学の方法論や具体的な日本地誌についての講義を行いますが、それを踏まえて「地誌学Ⅱ」では外国地誌についての講義を行っています。具体的には、ポルトガルを対象地域として取り上げ、さまざまな視点からポルトガルの地域的特色について学んで行きます。

ところで、皆さんはポルトガルについて、どのようなイメージを持っているでしょうか? サッカーの強豪国としてのイメージを持っている人も最近は多いと思いますが、多くの日本人が描くポルトガルのイメージは、「南蛮文化」や「鉄砲伝来」など16世紀の大航海時代のイメージのまま固定化されている場合が多いようです。その一方で、大航海時代以後の歴史的歩みや現在のポルトガルの地域像については意外に知られていません。

ポルトガルは、日本の国土面積のわずか4分の1、人口も約1千万人の小さな国なので、お隣のスペインに比べて日本では存在感が薄いようです。しかし、国土の南北に顕著な文化的地域差があるほか、人口が集中する沿岸部と過疎化が進む内陸部との格差も広がっており、小さな国の割には国内の地域構造は複雑です。また、多数の移民を海外に送り出してきた移民送出国であると同時に外国人労働者の受入国でもあり、国際的人口移動の構造も特徴的です。さらに、日本ではあまり知られていませんが、EU諸国を中心に多くの観光客が訪れるヨーロッパ有数の観光国でもあります。食文化の面でも、魚の消費量が多いだけでなく、1人当りの米の消費量がヨーロッパで最も多いなどの特徴が見られます。このように、ポルトガルはきわめてユニークな特色を持つ地域であり、地域の全体的な特色を把握する方法を身につけるには最適な地域の1つであると言えます。

この授業では、ポルトガルの地域像を描けるようになることを直接的な目的としていますが、それは私たちが住む日本を相対的な目で見つめ直すこともつながります。地誌学を学ぶ意味も、さまざまな地域について的確な地域観を持つことだけでなく、自分たちが生活する地域を広い世界の中で相対化してみる視点を身につけることにあると思っています。

(上)ポルトガルの首都リスボンの中心部にある「ロシオ広場」。白と黒の石で表現された石畳のデザインが美しい。
(下)ポルトガル北部の石造りの民家。1階は家畜小屋として利用され、2階の居住空間には外階段で登ります。玄関前の踊り場はポルトガル語で「ベランダ」と呼ばれます。

フィールドワークをはじめとする地理学研究の基礎力を身につける。

地理歴史専修では、「地誌学」以外にも「地理学概論」「自然地理学」「人文地理学」など地理学に関する講義科目が数多く置かれるほか、「地理学研究法」「地理学演習」のような卒業論文をまとめるために必要なさまざまなスキル・知識を学ぶ実習・演習科目も用意しています。特に、「地理学演習」では、フィールドワークに基づいて論文をまとめる力を身につけることを重視しており、実際に現地に出かけて観察活動を行ったり、聞取り調査を行ったりする機会をなるべく多く設けるようにしています。

卒業生の多くは一般企業に就職しますが、教員や公務員、大学院進学者など進路は多岐にわたります。卒業生の中には都市開発や地域づくりなど地理学の専門知識を直接活かせる職場で活躍する人もいますが、それ以外の仕事においてもフィールドワークを通して磨いた地理的なセンスや社会スキルが大いに役立っています。こうした地理学の学びを通して身につく能力や学問的な魅力を、ぜひ多くの皆さんに知ってもらいたいと思っています。

フィールドワークの楽しさを知ってもらうために、高校生を対象とした「フィールドワーク入門講座」も行ってきました(早稲田大学近くの穴八幡神社にて)。

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