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新入生への祝辞 知らないことに出合う場所にようこそ――教育学部に入学するみなさんへ

早稲田大学教育学部長 若林 幹夫(わかばやし みきお)

2020年度4月に早稲田大学教育学部に入学する皆さん、そして今日までみなさんを育て、支えてきたご家族の皆様、ご入学おめでとうございます。

本来ならば大隈記念講堂で直接お祝いの言葉を述べるはずでしたが、新型コロナウィルス感染症の拡大で、残念ながら今年の入学式は中止となりました。代わってこのHP上で、みなさんに入学のお祝いの言葉をお届けします。

晴れて大学に入学し、サークル、部活、アルバイト、旅行、資格取得など、これからの大学生活をどう過ごそうか考えている人が、皆さんの中にも多いと思います。それはそれでよいのですが、改めて言っておきたいことは、大学は第一に学問するところだということです。でも、「学問する」とはどういうことでしょうか? それは高校までの「勉強」とどう違うのでしょうか?

昨年、ある授業で学生から、「この授業はどういう勉強をすればいいですか? 僕、いい成績をとりたいんです。」と言われて、虚を突かれた思いをしたことがありました。よい成績をとるために勉強する。その人は高校まで、ずっとそういう風に勉強してきたのでしょう。でも大学で学ぶこと、学問を学ぶということは、よい成績をとるために勉強することではありません。もちろん、各学期の後には成績評価がなされますが、それは学んだことの結果の評価であって、目的ではないのです。

では、大学で学ぶことの目的は何か? それは学問的に考える姿勢と方法を学ぶことです。高校までの学校の先生たちとはちがって、大学の教員の大多数は研究者です。そして研究者が行っている研究とは、自然や社会や人間について未だ知られていないことを発見し、知り、理解しようとすることです。研究という仕事は、未だ知られていないこと、分からないことがあって初めて成り立ちます。そして学問とは、そんな研究のこれまでの成果を前提として、そこからさらに新たなことを知っていくための方法のシステムです。ですから大学で学ぶとは、学問によってすでに知られていることを知るだけでなく、いまだ知られていないことを見つけ、それについて知り、理解するための方法を学ぶということなのです。言い方を変えるとそれは、「知らないことを見つける方法」や「知らないことについて考え、それについて知り、理解するための方法」を学ぶということです。

大学の教員は、それぞれの専門分野について膨大な知識をもっています。これから始まる授業では、そんな知識が大雨のように皆さんの上に注がれるかもしれません。しかし、そんな膨大な知識を大学の教員が語ることができるのはなぜかと言えば、知らないことを見つけ、考えるためには、すでに知られている多くのことを知らなくてはならないからです。そして皆さんも、これから沢山のことを知りながら、知らなかったことや考えたことのなかったことを見つけ、それらについて知り、考えるための方法を学ばなくてはなりません。

まだ大学に入ったばかりの皆さんには、私がここで述べたことの意味はよくわからないかもしれません。今はまだ、よくわからなくてもいいのだとも思います。けれども、そんな「よくわからないこと」と付き合おうとすることが、大学で学ぶことの第一歩なのだということを覚えておいてください。さまざまな知識を身につけながら、そんな「わからないこと」との付き合いを続けていけば、卒業する頃には皆さんから見える世界の風景は、今見えているものとは違うものになっていることでしょう。そしてそれは皆さんの生き方、考え方、他者や世界との関わり方を、今よりも豊かにするものであるはずです。

知らないこと、考えたことのないことに出合うための場所にようこそ。そんな場所としての大学への歓迎の意味を込めて、改めて「入学おめでとう」の言葉を贈りたいと思います。

2020年4月1日

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