シンガポールの地でWASEDAのグローバル化を牽引
―本学の専任職員に応募したきっかけをお聞かせください。
「教育と経営の間の仕事」として興味を持ったためです。私はもともと高校の教師一家の中で育ち、教師になりたいという思いがありましたが、教師になる前に様々な経験をしたいという思いから、新卒では外資系コンサルティング会社に就職しました。そこで働く中で経営の面白さを感じ、自分がやりたいことは教師よりも「経営の側面から教育を変えること」なのではないかと気がつきました。そこで出会ったのが大学職員です。数ある大学の中でも早稲田大学を選んだのは、改革指向が高いことに魅力を感じたことと、職員が一定の裁量権をもって運営に携わることができる職場であると感じたのが理由です。
―現在までにどのような業務を担当されてきましたか。
2005年の秋に既卒採用で早稲田大学に入職しました。初めは教育学部事務所に6年間勤務し、教員免許を取得する学生のサポートの業務に携わりました。文部科学省に申請書を提出したり、学生の相談を受けたりといった内容です。また、私はもともと海外志向があり、教育学部での6年間の勤務の後、大学の研修制度を利用してロンドンにあるビジネススクールでMBAを取得しました。帰国後は7年間国際課にて勤務し、ヨーロッパ担当として来訪対応や協定締結の業務に従事していました。国際課での業務を経験した後、早稲田大学のグループ会社の早稲田大学アカデミックソリューションに2年間出向し、2022年6月からは早稲田大学の系属校である早稲田渋谷シンガポール校で働いています。
早稲田渋谷シンガポール校は全生徒320名、教員60名ほどの学校です。そこで私は事務局長として、出納管理、採用や給与等の人事、大学との交流、対外折衝など、川上から川下まで(戦略立案から運営まで)経営全般にわたる幅広い業務を担当しています。学校の重要な意思決定に携わることには、プレッシャーを感じますが、同時に非常にやりがいを感じています。世界をとりまく環境とともに激変する経営環境に対し、日々、知恵を絞って取り組んでいるところです。

バナナの木に囲まれた早稲田渋谷シンガポール校の大隈重信像
―早稲田渋谷シンガポール校が果たす役割は何だと思いますか。
シンガポールという立地は、グローバルな感性を磨く場所としてはこの上ない場所だと思います。シンガポール政府は様々な民族を積極的に受け入れて融合する政策を取っており、また少子高齢化の中でスキルのある外国人労働者を積極的に受け入れるなど、今後日本が参考にできる施策を先駆けて実施しています。中高生の多感な時期にこういった施策を肌で感じることは貴重な経験ですし、将来の日本のリーダーに必要な要素だと思います。
シンガポールという環境下で、本校生徒やその保護者の多くは、国際化を意識した教育を求めています。本校では、語学力はもとより、自ら考えて答えを出す力、それを人前で堂々と理路整然とプレゼンする能力など、将来、グローバルに活躍できる人材を育成するための教育を実践しています。本校の生徒の多くは卒業後に早稲田大学へと進学しますが、早稲田大学の中でも本校卒業生の評価は非常に高く、早稲田大学が掲げる「善良な地球市民の創出」という観点でも、本校は大きな役割を果たしていると思います。本校で学んだ生徒には、卒業後、シンガポールで学んだことを活かして、それぞれの進路で日本を変えていくような活躍をしてくれることを期待しています。

3年ぶりに一般公開された2022年の文化祭の様子
多様な業務経験から「世界で輝くWASEDA」を支える
―早稲田大学のグループ会社への出向は現在の業務にどのように活きていますか。
早稲田渋谷シンガポール校に異動する前に勤務していた早稲田大学アカデミックソリューション(以下、WAS)では、研修を企業や大学等に提案するチームのリーダーを務め、プロジェクト管理、人事評価、チームの戦略立案など幅広くマネジメント業務を経験しました。その一環として新しいビジネスの開拓や提案も様々行い、ビジネスプランの作り方も学ぶことができました。また、WASの中では特に大学との橋渡しの役割を期待され、WASと大学の間で意思疎通が難しい時には双方の間に入るなどの手助けをしていました。
WASでは、営利企業として常にコストや売り上げを意識したマネジメントが求められ、自身がコストになるということを強く意識することになりました。WASに出向した2年間に、損益管理やキャッシュフローの考え方を身に付けたり、人事評価を経験したりできたことは、その後の早稲田渋谷シンガポール校での仕事にも役立っていると思います。
―早稲田大学職員を目指す皆さんへメッセージをお願いします。
私は現在シンガポールで勤務していますが、最初から海外駐在を目指して仕事をしていたわけではありません。様々な紆余曲折を経て、一見関係が無いと思われる経験が今につながっていると感じています。あまり自分でやりたいことや行きたい部署を狭めずに、何にでも興味を持って積極的に仕事に関わることが、充実した職員生活を送るコツなのではないかと思っています。また大学職員の業務は地味で作業を繰り返すイメージがあるかもしれませんが、今の大学職員には、変化する社会に対応すべく常に外部環境を意識しながら自身の業務を捉えることが求められており、責任とやりがいを感じる刺激的な仕事だと思います。長期的な視野を持ちつつ、日々の業務に取り組むことで充実した社会人生活を送っていただきたいと思っています。