2013年度9月卒業式・修了式 鎌田総長の式辞

皆さん、ご卒業、修了、おめでとうございます。

この度、めでたく2013年度9月学部卒業式・大学院学位授与式を迎えられたのは、学部卒業者793名、大学院修士課程修了者307名、大学院専門職学位課程修了者80名、合計1180名です。 これに、午前中に学位授与式を行いました博士学位受領者111名を加えますと、合計1291名となります。 なお、本日の卒業生・修了生のうち、世界各地から早稲田に来られた留学生は489名に上ります。

これら全ての卒業生・修了生の皆さんに、早稲田大学を代表して、心からのお祝いを申し上げるとともに、長い間、物心両面から卒業生・修了生の皆さんを支えてこられたご家族・ご友人の皆さまに、衷心よりお慶びを申し上げます。

卒業生・修了生の皆さまの大多数は、本日をもって大学または大学院を離れ、社会に巣立っていくものと思いますが、この機会に、是非、教育というものの意義について振り返ってもらいたいと希望します。

130917_address2天然資源の乏しいわが国が、明治維新以後、極めて短い期間に近代化を成し遂げ、第二次世界大戦後も驚異的な早さで復興し、世界有数の経済大国へと発展した背景には、早くから国民が高い水準の教育を受け、その成果が社会の隅々にまで行き渡り、それを基礎として、日本国民が持ち前の勤勉さをもって優れた科学技術や安定した社会制度を発展させてきたことがあると考えられます。

20年以上も続いた経済の低迷から脱し、わが国を再び飛躍させようとする現政権の「日本再興戦略」においても、イノベーションの推進などと並んで、大学改革を含む人材力の強化が掲げられているのも自然の成り行きといって良いでしょう。

しかしながら、教育の目標は、学生・院生を国や産業を発展させるための素材とみなして、これに知識や技能を教え込むことにあるわけではありません。

「日本再興戦略」と密接な関連を有する教育再生実行会議の第三次提言「これからの大学教育等について」も、その冒頭には、「教育再生は、個人の能力を最大限引き出し、一人一人が国家社会の形成者として社会に貢献し責任を果たしながら自己実現を図り、より良い人生を生きられる手立てを提供するという教育の機能が十分果たせるようにする改革です」と記しています。

人は、生涯を通じて、さまざまな困難に遭遇しますが、その都度、問題の本質を見ぬき、打開の方策を考え、必要な資料等を参照してそれを検証し、周囲を説得して、実行していかなければなりません。 教育は、そのために必要となる基礎的な素養と自ら考える習慣を身につけさせることなどを最大の目標にしていると思います。

したがって、本日の卒業式は、皆さんにとって、学びの終了の日ではなく、これからも自らが主体的に学び続け、自己実現を図っていく、その新たな門出の日であるのです。

とりわけ、この場の皆さんのように、優れた資質を有する方々は ”Noblesse oblige.” という西欧のことわざが語るように、その能力に普段の磨きをかけ、それを人類全体の幸福を実現するために用いる使命を負っていると思います。 早稲田大学の建学の理念を謳った「早稲田大学教旨」も、学問研究の成果を、私利私欲や一党一派の利益のために用いるのではなく、広く世界の人々にその恩恵を享受させようとする人格を養成することこそが本学の教育の最大の目標であるという趣旨が語られています。

本学で学んだ先輩たちの中には、早稲田の特色である進取の精神とともに、こうした理念を体現した誇るべき方々が大勢いらっしゃいます。 例えば、本学理工学部を卒業し、「SONY」を創立した、本学の名誉博士、校賓であられる井深大は、飽くなき技術開発への情熱をもって、国産初のテープレコーダーの開発、トランジスタラジオの発売、世界初のトランジスタテレビの発表などを通じて、現在の世界的企業である「SONY」の基盤を築かれました。 井深さんは、常々、「ソニーは今まで他人のやらないことをやってきた。未解決のものがあれば、ソニーで解決してやればいい。日本初、世界初のものを創ってこそ、人より一歩先に進むことができるのだ」と語っておられたように、「進取の精神」を体現されていらっしゃいましたが、同時に、教育についても深い造詣と関心を持たれ、本学への物心両面で多大なご支援を下さいました。 かつて、井深さんは本学卒業式において祝辞を述べられた際に、人間を築きあげることの重要性を説き、今日限りで、大学を卒業したことを忘れて、今までよりももっと大きな勉強、広い勉強を続けていくことが社会に応える一番大きな責務であるとおっしゃられました。

どうか皆さんも、本学で身につけた豊かな学識、自分の頭で考える力、そして貴重な人間関係などを基礎としながら、生涯を通じて学び続け、自らを発展させ続けて下さい。

早稲田大学は、昨年11月に、創立150周年を迎える2032年に本学がどのような姿であるべきかを見据えた中長期計画「Waseda Vision 150」を策定しました。 そこでは、「世界に貢献する高い志を持った学生」が集って互いに切磋琢磨し、「世界の平和と人類の幸福の実現に貢献する研究」が行われ、「グローバルリーダーとして歓びを持って汗を流す卒業生」が世界の至る所で、またありとあらゆる分野で活躍し、大学と密接な協働関係を構築していくという将来像(Vision)を思い描き、それを実現するために13の戦略と75のプロジェクト、そして主立った項目についての数値目標を提示しています。

早稲田大学もまた、この Vision の実現のため、精力的に自己改革を図っていく所存です。

本学を巣立っていく皆さん、早稲田大学とともに、すべての人々が安全で幸福な生活を営むことのできる平和で豊かな社会の実現のために、日々努力を重ねていこうではありませんか。

皆さんのさらなる飛躍を祈念して、お祝いの挨拶とさせていただきます。 本日は卒業・修了誠におめでとうございます。

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