寺山修司未発表資料群の寄託と共同研究開始について 演劇博物館に自筆ノート・演出メモなど数千点

寺山修司

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このたび早稲田大学坪内博士記念演劇博物館に、今年で没後30年となる寺山修司(本学教育学部出身)に関する数千点におよぶ貴重な資料群が、オランダ・フリースランド州在住の田中未知氏より寄託されました。田中氏は寺山が亡くなるまでの16年間秘書を務めた方で、寺山作詞の「時には母のない子のように」の作曲者としても知られています。

この資料群は、田中氏が資料の散逸を防ぐために長年にわたって私財をなげうって収集・保管されてきた厖大なコレクションで、寺山の戯曲や脚本から歌詞・エッセー・競馬のコラムまで多岐にわたるジャンルの自筆原稿やノート、演劇・テレビ・ラジオ・ミュージカル等の台本、多数の写真や友人・知人からの書簡、寺山の蔵書、海外公演等の録音テープ、寺山が所有していたレコード、海外公演の記録ファイル、田中氏が収集した寺山の雑誌紀行文や対談記事等のファイル、寺山の高校時代の答案用紙や同人誌、中学時代の学級新聞等であり、寺山の全仕事・全人生を網羅するほどの充実した資料群です。

中には存在しないと思われていた演出メモや高校時代の自筆ノート、自作アルバムなど、貴重な未発表資料が多数含まれています。本資料は寺山の創作活動の実態や人柄、交友関係等を知るうえで不可欠のきわめて重要な資料群であり、今後の寺山研究に決定的な影響を与えるものといえるでしょう。

寺山自筆ノート「ロミイの手帖」内で描かれたイラスト。 闘病中の病室で書かれた文学書の感想や散文、時々の思考や感情の断片などある。

寺山自筆ノート「ロミイの手帖」内で描かれたイラスト。
闘病中の病室で書かれた文学書の感想や散文、時々の思考や感情の断片などある。

田中氏は、貴重な資料群を散逸させることなく研究資源として活用し後世に伝えることを熱望され、このたびの寄託となりました。演劇博物館では、早稲田大学演劇映像学連携研究拠点の研究チーム「寺山修司の創作〜1次資料から明らかにする活動実態〜」のメンバーに若手研究者を加えたグループで田中氏とともに共同研究を行い、資料の有効活用を図るとともに、成果を社会に還元し、寺山研究の発展に寄与したいと考えています。

11月には早稲田大学大隈記念タワー(26号館)の125記念室において寺山修司展を開催し、未公開資料を含む重要な資料を一般公開する予定です。今後は田中氏とともにデータベース化やデジタル化にも着手し、所有者である田中氏と相談しながら、資料の保存と公開にも努めていきたいと思います。

会員誌『シグネチュア』に連載された『不思議図書館』の自筆原稿。寺山が海外を旅行するたびに興味を惹かれた本を集め、独自の解釈で紹介したもの。

会員誌『シグネチュア』に連載された『不思議図書館』の自筆原稿。寺山が海外を旅行するたびに興味を惹かれた本を集め、独自の解釈で紹介したもの。

市街劇『地球空洞説』など、多数の自筆原稿が寄託資料に含まれている。

市街劇『地球空洞説』など、多数の自筆原稿が寄託資料に含まれている。

資料寄託に寄せて:田中未知氏より

このたび、資料寄託という形で、私が長年収集・保管してきました寺山資料を早稲田大学坪内博士記念演劇博物館にお預けすることが決まり、心から安堵するとともに大変に感謝しております。

寺山は俳句、短歌、詩、シナリオ、演劇、映画、写真、評論、スポーツとジャンルを超え、あらゆる創作活動に挑戦した稀代の表現者で、恐るべき勢いで時代を駆け抜けました。私はその間、寺山の秘書兼マネージャーとして、また劇団の制作及び照明担当として、寺山の創作活動を支えて参りました。

寺山は1983年、惜しまれながら47歳という若さでこの世を去りましたが、非常に几帳面な性格で、若いころから自分の仕事をファイル、スクラップという形で残しておりました。彼の亡き後、私がそれを引き継ぎ、可能な限り収集・整理したのがこの資料群です。

早稲田大学は寺山の母校であり、日本で唯一の演劇博物館であると伺っております。今回この寄託事業を契機に、寺山の貴重な資料が散逸することなく、若い世代の方々に広く研究され、これまであまり知られることのなかった寺山の魅力がより多くの方々に理解され、その真価が問われますことを、心から願うものです。

以上

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