細胞シートに血管網を形成する技術を開発 理工・梅津研究研、東京女子医大と共同で

研究概要:3次元組織構築のための血管網導入技術の開発

人工多能性幹細胞(iPS細胞)などを使った再生医療では、細胞単位や薄膜での移植といった方法で研究が進んでいる。このような再生治療効果をさらに高めるためには生体外構築した組織や臓器を移植することが考えられる。しかしながら、血管網がなければ組織自体が生存できないという問題がある。そこで、本研究では細胞シートに血管網を導入させることで酸素・栄養素供給を増大,老廃物除去を促進し多層化細胞シートを維持する方法を見出した。

血管網を構成している内皮細胞を含んだ細胞シートを微小流路付きコラーゲンゲル上に貼付けて培養することで、シートからコラーゲンゲルへ内皮細胞が浸潤しネットワークを形成し、灌流可能な血管網付き組織の作製に成功した。(図1)本実験では新生児ラット初代培養心筋細胞を使用し、微小流路への灌流量は生体内細血管に生じるずり応力から0.5 mL/minに設定し5日間培養した。灌流培養した組織をHEやAZAN染色にて観察を行った結果、多数の細胞がコラーゲンゲルに浸潤・管腔化してネットワークを形成し、微小流路の表面を覆うまで発達した。内皮細胞ネットワークが微小流路と結合しているかを確認するために赤血球を流した結果、赤血球はネットワークに流れて細胞シートにまで到達した。この結果から、新しく形成させた内皮細胞ネットワークは生体の血管網と同様の機能を持ち、組織として維持する可能性を示した。

図1 微小流路付きコラーゲンゲルを使った3次元組織構築

図1 微小流路付きコラーゲンゲルを使った3次元組織構築

次に3次元組織を構築するため5日間の培養インターバルをおいて多層化を行った。5日間で血管網が発達した後に細胞シートを積層していく方法である。3層の細胞シートを4回追積した結果、12層の心筋組織の構築に成功した。

これらの成果は、生体内に近い条件を試験管の中で作り出せるため、薬剤効果を検証する精度が高める技術として期待される。

掲載媒体

今回の研究成果は「Scientific Reports (Nature Publishing Group)」の論文「In Vitro Engineering of Vascularized Tissue Surrogates」として掲載されました。

リンク

梅津研究室

PubMed: In vitro engineering of vascularized tissue surrogates.

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