世界最古の左右非対称な頭骨を持つイルカの化石と歯鯨類における左右対称及び非対称な頭骨の進化の意味

早稲田大学教育・総合科学学術院教育学部理学科地球科学教室(平野弘道研究室・村上瑞季助手)を中心とした研究チームは1750-1550万年前の世界最古の左右非対称な頭骨を持つイルカ化石(マイルカ上科という広義のイルカの仲間)の存在について報告し、歯鯨亜目において左右対称及び左右非対称な頭骨がどのように進化してきたのかシミュレーションによる解析で明らかにしました。これまで考えられてきた1000万年前以前に栄えた祖先的なイルカのグループはみな左右対称な頭骨を持つという説を見直す内容となっています。なお本研究に関する論文は、日本古生物学会によって刊行されている国際学術雑誌Paleontological Researchに7月1日付けで掲載されました。

研究報告

イルカを含む歯鯨類の仲間は超音波を使って獲物や外敵の存在を探るエコロケーションをすることが知られています。彼らの左右非対称な頭骨はこのエコロケーションを有効に行うための適応だと考えられています。現在の多くのイルカ達が左右非対称な頭骨を持つのに対し、1000万年前以前に栄えた祖先的なイルカのグループはみな左右対称な頭骨を持つと考えられてきました。本論文では1750-1550万年前の世界最古の左右非対称な頭骨を持つイルカ化石(マイルカ上科という広義のイルカの仲間)について報告しました。この化石には頭骨後部の中篩骨と前頭骨が左側に2.9°傾いている,左の鼻骨が右の鼻骨より大きい,左の前上顎骨が右の前上顎骨より長いといった左右非対称性が見られます。本論文ではさらに左右非対称な頭骨は祖先的なイルカの仲間でも例外的な存在ではないことを指摘しました。そして、歯鯨亜目において左右対称及び左右非対称な頭骨がどのように進化してきたのかシミュレーションによる解析で明らかにしました。

左右非対称な頭骨がエコロケーションをする上で有用にもかかわらず、なぜ歯鯨類には二次的に左右対称な頭骨を進化させるものが何度も現れるのでしょうか? 実は現生のイルカを含む歯鯨類で左右対称な頭骨を持つものはNBHFクリック(Narrow-Band High-Frequency Clicks)という周波数が高く狭い超音波でエコロケーションを行うことが知られています。このNBHFクリックを用いる種類は小型で大きな群れを作らないという共通した特徴を持ちます。そして、NBHFクリックは天敵のシャチには周波数が高すぎて聴き取ることができないことから、NBHFクリック(とそれに関連する左右対称な頭骨)はシャチの捕食を避けるための適応であると考えられています。絶滅した歯鯨類捕食者の中には高周波の音を感知できなかったのではないかと指摘されているものもいます。このことから、研究チームは左右対称な頭骨を持つ祖先的なイルカなど左右対称な頭骨を持つ化石種も、現生種のようにNBHFクリックを用いて捕食者を避けていたのではないかという仮説を提唱しました。

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