文部科学省における再就職等問題と本学のスーパーグローバル大学創成支援事業への取組みについて

2017年1月20日の内閣府再就職等監視委員会の「文部科学省職員及び元職員による再就職等規制違反行為が疑われた事案に関する調査結果について」に引き続いて、2月21日には、文部科学省再就職等問題調査班の「調査報告(中間まとめ)」が発表されました。
本学は、いずれにおいても、文部科学省による再就職等規制違反行為の相手方となっていたことが指摘されました。ただし、上記の調査結果および調査報告のいずれも、本学教員による「面談」が採用面接であったかのように認識しているように窺えますが、本学において、教員の採用は各学部等の教員所属箇所における厳正な業績審査等によって決せられるものであり、人事部は教員の採用について何らの権限も有しておりません。文部科学省から本学人事部へもたらされた情報に基づく本学教員による「面談」は、本人の意向の確認等の予備的な事前折衝の一つに過ぎず、教員採用手続の一環としての採用面接とは全く異なることは1月20日の記者会見でも申し上げた通りです。
上記の調査結果および調査報告で指摘された点に関し、本学は、1月20日に表明しましたように、国家公務員法に対する理解不足を反省するとともに、「私立大学と文部科学省との関係にあらぬ疑いを抱かれ、国民全体、学生、教職員の高等教育に対する信頼を失うような事態が生じることがないように万全の対応を徹底する」所存であり、その決意に変わりはありません。

しかしながら、近時、本学がスーパーグローバル大学創成支援事業に採択されたことと前高等教育局長の再就職問題が関係しているかのような誤った議論がなされたことは大変遺憾であり、これが本学関係者のみならず広く国民全体にあらぬ誤解を生じさせるのではないかと強く懸念するものであります。
また、上記の議論が、大学がグローバル化対応を進めること、あるいは国がそれを支援すること自体を批判するものであるなら、それは大きな誤りであると言わざるを得ず、到底看過することはできません。

グローバル化が進展し、科学技術とりわけ情報技術が急速に発展して、社会のあり方が大きく変わろうとしている現代においては、グローバルな視点をもって、未知の課題に果敢に挑戦し、独創的な解決策を練り上げて、価値観や文化的背景の異なる人たちと協働しながらそれを実行していく力が求められています。世界各国の高等教育機関は、そうした社会の変化に応えるべく、教育目的・教育内容・教育方法を不断に改善するとともに、それらを適正かつ効率的に実現しうる大学ガバナンスを確立するための改革を進めており、国際的な大学間競争も激化しています。そうした中で、わが国の大学がグローバル化対応策を強化し、国がそれを支援する政策をとろうとするのは極めて自然なことであり、むしろこれまでは近隣諸国に後れをとってきたと言っても過言ではありません。

早稲田大学は、自由で独創的な研究を通じて世界の学問に裨益(ひえき)すること(学問の独立)、学理を学理として究(きわ)めるとともに、その応用の道を講ずることによって社会の発展に寄与すること(学問の活用)、学問研究の成果を社会全体の利益のために役立て、広く世界に活動すべき人格を養成すること(模範国民の造就)を建学の理念としています。本学は、この建学の理念に従って、創立当初から強く「世界」を意識してきました。
創立後間もない1884年に最初の留学生の受け入れを嚆矢(こうし)として、清国留学生部(1905年)・国際部(1963年)・国際教養学部(2004年)等の創設、英語の授業のみで学位取得のできるプログラムの導入(1998年以後)など、積極的に国際交流策を講じて、先導的な役割を果たしてきています。
特に、近年は、2008年の”Waseda Next 125”や2012年策定の”Waseda Vision 150”に基づいて、グローバルスタンダードに即した教育・研究・社会連携の実現と大学運営体制の確立を目指す改革を加速してまいりました。その結果、グローバル化対応に関しては、700を越える海外有力大学等との学術交流協定の締結、6学部13研究科での英語学位プログラムの実施、ダブルディグリー・プログラムや多様な海外派遣プログラムの導入等々の施策が効を奏して、わが国で最も多くの外国人学生(約5,400名)が在籍し、おおよそ4割の学生が卒業するまでに一度は海外での学びを経験するに至っています。
また、国際的にも通用する学識と思考力・表現力等を涵養するための教育改革も積極的に進め、これに加えて、研究面でも、中長期の外国人研究者受入数でわが国第2位、QS社の世界大学ランキングで5分野(現在9分野)が世界100位以内にランクされるなどの実績を上げてきました。これらの実績と意欲的かつ具体的な将来計画が、第三者による厳正な審査制度の下で高く評価されて、スーパーグローバル大学創成支援トップ型に採択されたのであって、文部科学省との不透明な「癒着」によるなどという議論は、本学のみならず審査委員はじめ本事業関係者の全てを侮辱するもので、到底容認することができません。

スーパーグローバル大学創成支援事業では、計画の実現に必要となる経費の半分以上は大学自身が負担することになっています。国立大学の場合には大学負担分もほとんどが運営費交付金等の国費によってまかなわれることになり得ますが、私立大学の場合には文字通り自主財源によることになります。早稲田大学では、上述のように、世界に貢献する大学であり続けるため、新しい時代にふさわしい教育研究体制を構築すべく、20年以上にわたって独自に策定した計画に基づき、グローバル化対応策を講じてきたのであって、その一部に位置づけることができるからこそスーパーグローバル大学創成支援事業に応募し、これを遂行することができたのです。したがって、本学が、不当にスーパーグローバル大学創成支援事業に関する補助金を受領し、これを恣意的に浪費しているかのような疑念を抱いて議論をしているのだとすれば、全く実態に反する邪推であり、いたずらに国民を惑わそうとする悪質な議論としか言いようがありません。

また、再就職等問題を契機として、一部では、大学に対する公財政支出を廃止または減額すべきであるという議論もなされています。しかし、わが国の高等教育に対する公財政支出は先進諸国の中でも低位にあることはよく知られていますが、これを国私立別に見るならば、2014年実績で、国立大学(86校)へは運営費交付金等として1兆3360億円が投入されているのに対し、わが国の大学生の8割近くが在籍する私立大学(603校)への経常費補助金等は3338億円という大きな格差が生じています。学生一人当たりの公財政支出額で見た場合でも、国立大学については218万円と世界最高水準であるのに対し、私立大学に対するそれは17万円に過ぎず、世界最低水準であるという不当な格差が存在します。
それにもかかわらず、本学をはじめとする私立大学は研究教育両面で国立大学に勝るとも劣らない実績を上げています。たとえば、本学は、QS Graduate Employability Ranking 2017 で、前年に引き続き国内第1位となり、世界でも26位にランクされています。わが国の高等教育の将来を考えるときに、こうした不合理な格差が拡大しつつある現状を打開して、教育研究の水準を飛躍的に向上させるためのオールジャパン体制を構築するには何をなすべきかを真剣に議論することこそが重要であろうと考えます。

いずれにしましても、本学は、冒頭に述べたように、業務執行の公正さの確保に一層強く配慮するとともに、建学の精神と在野の伝統を維持しつつ、今後とも、世界へ貢献する高い志を持った学生の育成、世界の平和と人類の幸福の実現に貢献する研究の推進など、グローバル化対応をいっそう強力に進めていく所存です。関係各位には、これまでにも増したご理解とご支援をお願いいたします。

2017年3月4日
早稲田大学

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WASEDA University

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