複雑な精密3次元構造体作製に成功

光造形3Dプリンタ装置による複雑な形状の金属・樹脂の精密3次元構造体の作製に成功

発表のポイント

  • 光造形型3Dプリンタとめっきを組み合わせ、これまで製作が困難であった複雑で立体な金属・プラスチック複合材料部品、電子回路の作製に成功した。
  • 金属イオン含有樹脂に、選択的に無電解めっきを適用することによって、プラスチック上に綺麗な金属めっきを設けることが可能となった。
  • 様々なエレクトロニクスを自作できることが実証されたため、次世代エレクトロニクスの製造が求められているロボット・IoTデバイスの開発に大きな効果を発揮すると考えられる。
光造形3Dプリンタによる複雑な形状の金属・樹脂の精密3次元構造体の作製

概要

早稲田大学理工学術院梅津 信二郎(うめず しんじろう)教授、シンガポール南洋理工大学の佐藤 裕崇(さとう ひろたか)教授らの研究グループは、光造形3Dプリンタとめっきを組み合わせ、複雑な形状の金属・樹脂の精密3次元構造体を作製することに成功いたしました。新たに開発した、複数の樹脂を使用することが可能な光造形3Dプリンタ装置を用いて、標準樹脂と金属イオン含有樹脂(以下、活性前駆体)を組み合わせた立体構造物を作製いたしました。金属イオン含有樹脂に、選択的な無電解めっきを適用することによって、プラスチック上に綺麗な金属めっきを設けることができます。
本研究は、光造形3Dプリンタとめっき技術を利用するものであり、解像度40μmで、複雑形状で、様々な金属・プラスチック複合材料部品、電子回路などを作製できます。
本研究成果は、アメリカ化学会が発行する「ACS Applied Materials & Interfaces」に、2022年10月6日(木)にオンラインで掲載されました。

(1)これまでの研究で分かっていたこと

光造形型3Dプリンタを利用して、曲面上に高精度なプラスチック造形物を作製することは可能であったが、立体の表面だけでなく、内部表面にも金属を配置した金属・プラスチック複合材料部品や電子回路の作製はこれまでできてこなかった。3Dプリンタで造形したプラスチック造形物の表面全てにめっきを施すことは可能であったが、任意の箇所に金属を設ける技術ではなかった。

(2)今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと

今回、使用する樹脂に合わせて露光時間などを調整可能で、複数の樹脂を使用する光造形3Dプリンタ装置を開発し、標準樹脂と金属イオン含有樹脂(以下、活性前駆体)を組み合わせた立体構造物を作製した。金属イオン含有樹脂に、選択的な無電解めっきを適用できるため、プラスチック上に綺麗な金属めっきを設けることが可能となった。本アプローチには、①特定の金属パターンを有する複雑な金属・プラスチック 3D 部品を製造することができる、②高集積でカスタマイズ可能な 3 次元マイクロエレクトロニクスの造形が可能であるといったメリットがある。めっき可能な樹脂と通常樹脂から構成される立体を光造形3Dプリンタで造形し、その上で、めっきを施すことによって、めっき可能な樹脂の部分が金属となる。このプロセスは、単純な原理のため、複雑なエレクトロニクスの製造が可能ですが、「高価な製造装置」「複雑なプロセス」が不要である。

(3)研究の波及効果や社会的影響

本研究により、めっきを援用することで、3Dプリンタにより、金属とプラスチックから構成される立体造形物を複雑に造形可能なことを実証したことは大きな成果である。3Dプリンタは自由な造形が可能だと認識されているが、金属造形物の作製とプラスチック造形物の作製で使用される3Dプリンタは、異なるものである。様々なエレクトロニクスを自作できることを実証したため、次世代エレクトロニクスの製造が求められているロボット・IoTデバイスの開発に大きな効果を発揮すると考えられる。

(4)今後の課題

実用的なヘルスケアIoTデバイスの作製、小型の自律ロボットの開発を共同研究者と共に進めている。応用先を変更することによって、求められる機能や問題が変わるが、共同研究者とのディスカッションを行うことで、対応する。また、さらなるスペック向上に向けて、3Dプリンタの改良を行っている。

(5)研究者からのコメント

本研究は、アディティブマニュファクチャリング技術の発展にとって大きな意義がある。金属材料と機能性樹脂材料を組み合わせることで、単一材料では実現できない機能部品を製造することができ、3Dプリント技術の実用化・産業化を大きく促進できる。

(6)論文情報

雑誌名:ACS Applied Materials & Interfaces
論文名:New Metal–Plastic Hybrid Additive Manufacturing for Precise Fabrication of Arbitrary Metal Patterns on External and Even Internal Surfaces of 3D Plastic Structures
執筆者名(所属機関名):Kewei Song※1、Yue Cui※1、Tiannan Tao※1、Xiangyi Meng※1、曽根 倫成※2、吉野 正洋※2、梅津 信二郎※3、*、佐藤 裕崇※4、*
※1 早稲田大学大学院創造理工学研究科
※2 吉野電化工業株式会社
※3 早稲田大学理工学術院
※4 南洋理工大学
*責任著者
掲載日時:2022年10月6日(木)
掲載URL:https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acsami.2c10617
DOI:10.1021/acsami.2c10617

(7)研究助成

補助金名:文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援事業
補助事業名:Waseda Ocean 構想(モデル拠点名:ICT・ロボット工学拠点)
拠点リーダー名(所属機関名):尾形 哲也(早稲田大学)

補助金名:Singapore Ministry of Education [RG140/20]
研究課題名:Insect-Inspired Robot Developed Using Insect–Computer Hybrid Robot
研究代表者名: Hirotaka Sato

研究費名:JST未来社会創造事業 JPMJMI21I1
研究課題名:災害時にアクセスが困難な場所における生存者発見のための超環境適応ミニロボティクスシステム
主たる研究者名:梅津 信二郎、佐藤 裕崇

研究費名:早稲田オープン・イノベーション・エコシステム挑戦的研究プログラム「JST SPRING Grant Number JPMJSP2128」
研究課題名:Research on Next Generation Robotics and IoT devices using Ultra-Precision 3D Metal/Plastic Printing Technology
研究代表者名(所属機関名):SONG, Kewei(早稲田大学)

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