2013年度 学部入学式 鎌田薫総長による式辞

皆さん、ご入学おめでとうございます。

2013年度4月学部入学式にあたり、早稲田大学を代表して、新入生の皆様ならびにご列席のご家族・ご関係の皆様に対し、心よりのお祝いと歓迎のご挨拶を申し上げます。

本日、めでたく早稲田大学に入学された学部生は、13学部合わせて9,820名に上ります。

本学では、4月と9月に入学式を行っており、昨年9月には249名の学部生が入学しておりますので、本日現在の学部一年生総数は1万名を超えることになります。

鎌田薫総長

1882年10月21日に、本学の前身・東京専門学校が早稲田の地で開校式を行ったときの入学者は78名でありました。その後、さまざまな形での存続の危機もありましたが、130年余りの間に、本学がここまで大きく発展することができた背景としては、第1に、例えば、草創期の本学において、坪内逍遙を中心として、夏目漱石、小泉八雲、森鴎外などが教鞭をとっていたことにも見られるように、一貫して、学内外の最高水準の講師陣が熱のこもった授業を行ってきたことがあり、第2には、そうした講師陣の熱意に応える形で、個性豊かで進取の精神に満ちあふれた多様な人材が日本各地から、さらには世界各地から集い、互いに切磋琢磨する中で、幅広い教養、深い専門的知見そして豊かな人間性を身につけ、卒業後に、政治・経済・言論・芸術・スポーツなど、ありとあらゆる分野で大いに活躍をし、本学の評価を高めてきたことがあると考えています。

それらの本学卒業生たちの特色は、在野精神、進取の気性、世のため人のために尽くす犠牲的精神などにあるといわれています。これらの特色は、早稲田大学の建学の理念、すなわち「学問の独立(自由で独創的な学問に努めて、世界の学問に裨益すること)」、「学問の活用(学理を学理として研究するとともに、それを実際に応用する道を講じて、社会の発展に寄与すること)」、「模範国民の造就(個性を尊重し、心身を発達させ、世のため人のために尽くし、あわせて広く世界に活動すべき人格を養成すること)」に基づくものであるということができます。

このうち、「学問の独立」について、大隈の右腕として本学の設立を実質的に支え、建学の母と呼ばれている小野梓は、「国を独立せしめんと欲せば、必ず先ずその民を独立せしめざるを得ず。その民を独立せしめんと欲せば、必ず先ずその精神を独立せしめざるを得ず。而してその精神を独立せしめんと欲せば、必ず先ずその学問を独立せしめざるを得ず」として、学問の独立とは、単に権力から距離を置くということだけでなく、自立した精神をもった市民を養成する根拠でもあるということを明らかにしています。

また、「模範国民の造就」に関して、大隈重信は、学問をすると、その成果を自分自身や一党一派の利益を図るために用いるという悪弊が生じがちであるが、その悪弊を避けて、これを世のため人のために用いるという利他主義的な人格を養成することこそが必要であり、それが本学における教育の最も重要な点であるとしています。

大学の本来の役割は、単に知識を伝授することのみにあるのではなく、各人がその潜在的能力を再確認し、自らの進むべき道を見出して、生涯をかけて自己実現をしていく、そのための基礎力と基本理念を涵養するところにあると考えています。

早稲田大学では、これまでも、最先端の研究と最高・最良の教育、伸び伸びと個性を伸ばすことのできる課外活動の場を学生諸君に提供することにより、大学としての本来の役割を果たすべく努めて参りました。さらに、私たち理事会は、昨年11月には新たな中長期計画 “Waseda Vision 150” を策定し、そこにおいては、「人間力・洞察力を備えたグローバルリーダーの育成」を最も重要な柱の一つに位置付け、アジアのリーディング・ユニバーシティを目指して、本学の教育・研究体制の一層の拡充を図ることとしています。

私たちは、一昨年3月の東日本大震災と福島第一原子力発電所事故を通じて科学技術の限界、行政の機能不全、エネルギー浪費型生活様式の行き詰まりなどを痛感しました。これを克服し、安全で安心して暮らせる社会の構築に努めることが求められています。さらに、地球温暖化や国境を越えて広がる環境汚染、エネルギー問題、地域紛争など地球規模で解決を図られるべき困難な問題が山積しています。

こうした諸問題を解決する役割を担う若い世代の皆さんには、幅広い教養と深い専門的知見を基礎としながら、鋭い洞察力を持って問題の核心を把握し、さまざまな文化的背景・多様な価値観をもった人々との相互理解を深めつつ、自らの頭であるべき解決策を考え、それを実行していく力が求められています。

本学では、こうした課題に応えるために、この4月に「グローバルエデュケーションセンター」を設置しました。これによって、これまで進めてきた4人の学生に1人のネイティブスピーカーのつく実践的外国語教育、専門的文章作成能力を涵養するための授業、IT関連の素養や文科系学生にとっても必要とされる数学的・論理的思考力を身に付けるための教育などの全学基盤教育を一層充実させるとともに、学部の壁を越えて真のリベラルアーツ教育を展開していきたいと考えています。

また、教員による一方通行的な講義を主体とする授業スタイルから、演習・ゼミなどを中心とする双方向・多方向型授業に重点を移すとともに、インターンシップ、フィールドワークやボランティア活動などの体験型教育を拡充することによって、社会の実態を直視しつつ課題を発見し、必要とされる文献や資料等を自ら調査・分析し、具体的な解決策を提案し、議論を通じてそれをさらに発展させる能力が大いに鍛えられるものと期待しています。

グローバル化対応について、本学は、既に6学部11研究科において英語によって学位の取れるプログラムを開設し、セメスター制を完全実施するとともにクオーター制を部分的に導入していますし、4月入学と9月入学の併用や学生のニーズに応じた多様な留学プログラムの実施などによって、外国人学生の受け入れ数においても外国への派遣学生数においても、わが国随一の規模を実現しています。さらに、2014年4月には、900人規模の国際学生寮をオープンさせることなどを通じて、さらに一層キャンパスのグローバル化を推進し、キャンパスに居ながらにして異文化交流のできる環境がさらに発展することになります。

このように、早稲田大学では、現代社会の要請と多様な学生のニーズに柔軟に応えるために、各種の方策を講じているところですが、大学は、先ほども申し上げた
ように、基本的に、学生が自ら学ぶところであり、一方的に知識を植え付けるところではありません。したがって、これまでに説明したさまざまなプログラムについても、これを利用するかしないかは学生の選択に任されることとなります。学問・芸術・スポーツ等についても本学は極めて豊富な資源を有していますが、これを活用するか否かも学生の皆さんの自主的な判断に任されています。

皆さんの中には、ようやく入試を終えて、第1希望を達成した満足感に浸り、しばらくはゆっくり遊びたいと思っている人がいるかもしれません。あるいは、希望した学部に入れず、学習意欲が衰えている人もいるかもしれません。しかし、大学入試は、人生の中で数ある関門の一つでしかありません。皆さんの本当の学びは、今日、この瞬間からスタートしていると考えて下さい。

学生時代は、自由な立場で自分の生き方を模索し、自分なりの価値観を形成することのできる人生で最も大切な、そしておそらくは最後の時期であり、また、生涯の友を得ることのできる貴重な時期でもあります。しかし、後になってみれば、あっという間に通り過ぎてしまう極めて短い期間でもあります。これから過ごす大学生活が、皆さんの人生にとって最も意義深い4年間であったと思い起こすことができるよう、今この瞬間から、最大限の努力を開始して下さい。

大隈重信も、「喬木は風雪に耐えて愈々高し、樹根は大地に張って愈々深し。天下に憂いをいたして想いかえして考えるんである。高く飛ばんと欲すれば深く学ばざるべからず」と述べ、深く学ぶことこそが飛躍の源泉であることを強調しています。

新入生の皆さん、早稲田大学教旨に謳われている建学の精神をかみしめて、自ら信ずるところに従って、できるだけ多くのことがらに果敢にチャレンジし、幅広く深い教養と豊かな人間性を育んでください。 皆さんが、本学卒業後に、世界の平和と人類の幸福の実現に向けた人々の力強い歩みの先頭に立ってくれることを心から期待して、私からのお祝いと歓迎の挨拶とさせていただきます。

皆さん、ご入学おめでとうございます。早稲田大学において、存分に皆さんの能力に磨きをかけてください。

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