被災地・石巻の障がい児のからだやこころを開く体験デモ授業 世界初、重度発達障がい児の身体表現活動に「影メディア」の試み

早稲田大学理工学術院創造理工学部総合機械工学科三輪敬之(みわよしゆき)教授と東洋英和女学院大学人間科学部西洋子(にしひろこ)教授の研究グループは、東日本大震災以来、被災地に赴き被災者・児、障がい児らとともに身体表現ワークショップを通じた居場所づくりに取り組んでいます。

6月24日、宮城県立石巻支援学校で「影で出会い、影でつながる」と題して「影メディア」を用いた身体表現の体験デモ授業を実施しました。授業の中で、10人以上の重度発達障がい児が一緒に行う身体表現活動に「影メディア」を適用することは、世界で初めての試みです。

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「影メディア」とは

「影メディア」とは、装置を用いてかたちを変化させた影です。影メディア空間に一歩足を踏み入れると、いつも見ている自身の影とはかたちが異なる影や遅れた影など、背景の変化とともにさまざまな影が登場します。それらはからだに働きかけ、豊かなイメージと多様な表現をおのずと引き出し、さらにはからだやこころを開いて人と人との出会いやつながりの可能性を広げることが期待できます。このような思いから、三輪研究室では、影の働きを活かした影メディアの開発を行ってきました。

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石巻支援学校での体験デモ授業

今回は三輪研究室が開発した装置を体育館に設置して、1時間の体験デモ授業を3回、石巻支援学校の小学部、中学部の児童・生徒に向けて実施しました。1回の授業で、1組(児童・生徒:10名、ファシリテータ:4名)20分として2組、実影(通常の影)の世界と影メディア(変身させた影)の世界を体験しました。

三輪研究室のメンバーと石巻支援学校の児童・生徒が一緒になって影を使って遊び、楽しく体を動かし、影や影メディアから色々なものをイメージすることで、そこから新たな表現を創ることを楽しみました。

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今回の取り組みを振り返って

三輪敬之教授は「体験デモ授業は大成功でした。影の研究を始めて14、5年になりますが、これほどに素晴らしい場面に出会ったのは、私自身初めてです。子どもたちの表情が、授業が進むにつれて生き生きとしてくるのが実に印象的でした。普段の生活では見られない子どもたちの動きや繋がりが自然に引き出され、先生方も驚いていました。」と話します。

三輪教授(前列右から4番目)、西教授(前列右から3番目)と三輪研究室のメンバー

影メディア装置の前で 三輪教授(前列右から4番目)、西教授(前列右から3番目)と三輪研究室のメンバー

「石巻支援学校での授業の翌日には、石巻市や東松島市の地域の方々との定例のワークショップを行いました。影メディ空間が遊び場になり、大人も子供も、障害のあるなしに関係なく、一緒になって表現し、インクルーシブな世界が自然に生まれていきました。一つ一つは皆違うのですが、全体としては美しいまとまりがありました。普段、外では話をしない子どもが声を出すなど、奇跡のような出来事もあり、感無量の2日間でした。」と当日を振り返ります。

今後、影メディアを活用することによって、発達障がい、特に自閉症の子どもが苦手とする他者とのコミュニケーションや共創、自己表現などの分野で新たな可能性を拓くことが期待されます。

 
※本取組は、科学研究費助成事業基盤研究B(平成26年~28年)課題番号26280131「身体性メディアによる場の統合と離れた集団間における共創表現の支援」(研究代表者:三輪敬之)の支援を得て行いました。

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