2022年度卒業設計 特別賞(古谷賞)
広い公園の中にひっそりと佇む凄まじい形相の戦争遺跡。
都立東大和南公園および玉川上水駅駅前一帯はかつて軍用機のエンジンを製造する軍需工場が存在した。1945年に三度の空襲により工場は壊滅したが、変電所や給水塔は致命的な損傷を免れ、その後現在、工場跡地は集合住宅や学校、病院、公園等に整備され、変電所は保存されたものの給水塔は解体された。
戦後77年が経ち、戦争を体験した世代も高齢化により語り継ぐ人々が徐々に消え、空襲から唯一遺ったこの変電所も移り変わる街の中に埋もれ、やがて我々から戦争の歴史が風化し忘れ去られてゆくのではないか。語り部のいない世界で記憶を次の世代に伝える役割を建築に託し、街や公園という日常の一帯に戦争の痕跡をコラージュすることで、日常生活の体験の中に戦争の記憶を内包し、ふとした時に背景にある爆撃の瞬間を想起させる。