2021年度卒業設計 赤坂賞
飼育放棄や虐待によって年間3万頭を超える犬猫が殺処分されている。動物福祉先進国である欧州では建築家が動物のために設計した大規模な保護施設がある一方で、日本では自治体や小規模なボランティア団体が施設を運営していること多く、犬猫のために十分な住環境や医療環境を用意することは容易ではない。また里親探しや動物愛護の啓蒙活動なども限定的となっている。これら社会背景や保護犬を迎えた自身の経験を元に、社会に開かれた新しいかたちの犬と猫のための保護施設を設計した。建築が作り出す「場」を通じて動物と人が共生するより良い社会を創造することを目的とする。敷地は最大規模のドッグランを有し、国際的な流行の発信地でもある代々木とした。建築は4棟で構成され、明治神宮からの軸線と代々木公園のビスタラインを結ぶ交点に礼拝棟、交点の左右に猫と犬の棟、犬棟横にカフェ棟を設けた。既存の樹木を一切伐採せずに建築の外形をとることで自由な動物の動きをイメージさせる有機的なデザインとなっている。犬猫の行動様式に基づき、猫は垂直的に活動できる高さ10mの棟とし、犬には水平的に走り回ることができる屋外運動場をもつ円形の棟とした。