2018年度卒業設計 萩原賞受賞作品
廃棄物処分場は、人間の都市生活の利便の背景で生じた負の産物のひとつである。埋立てにより地形や環境に変化が生じた処分場跡地の活用方法は、各地に共通する課題といえる。
敷地は、大井川と牧之原台地の境界に位置する一般廃棄物最終処分場の跡地である。北東に富士山を展望し、台地には茶畑が広がる。敷地はこうした豊かな自然環境に囲まれているが、人工的な段丘状の地表の露出によって、周囲と断絶している。この場所に、かつての自然環境を取り戻すランドスケープをデザインし、自然景観の連続性を回復するとともに、敷地の地理環境と眺望を活かしながら、人が集まる場への転換を図る。そして、眺望の良さを活かすことのできるものとして、宿泊機能を中心とした施設を計画する。大井川の景観を保全するため、建物ヴォリュームは尾根の背後に集約し、台地上では茶畑を敷地内まで延長したうえで、ヴォリュームの大部分を台地面のレベルより下におさめた。また、客室棟は富士山に向かう軸線上に、段丘状の地形に沿って階段状に配置した。処分場の痕跡を活かしながらデザインされた建築とランドスケープが、これまで人が寄りつかなかったこの場所を、多くの人が訪れ滞在する場へと変化させる。
[敷地]静岡県島田市
[用途]ホテル等複合施設