2021年度卒業設計 蛭田賞
鉄道が開通する以前、品川の旧東海道のすぐ東側には海が広がっており、猟師町や潮干狩りの名所として親しまれていた。旧東海道は、江戸時代には「品川宿」として東海道五十三次の第一宿に指定され、海沿いの宿場町は旅人たちの往来で賑わった。戦後、東側の埋立てが急速に進み、品川から海は遠ざかっていった。本計画では、北品川に残る江戸時代の面影と現代の風景のコントラストを活かしながら、ゆたかな水辺空間を再生し、子どもから高齢者まで世代を越えて利用できる地域文化複合施設を提案する。埋立ての過程で生まれたV字の運河がつくりだす逆パースの構図を手掛かりに、地域センター、劇場、海洋資料館をリニアに配置し、周辺の住宅街や舟宿のスケールに溶け込むようなデザインとした。この地域に存在するさまざまな境界―砂洲と埋立地、江戸と現代、水と陸、子どもと高齢者―の架け橋となり、その境界を横断しながら地域活動の活性化を目指す計画である。