2020年度卒業設計 稲門建築会賞 TOMON Architectural Prize
本計画地である幕張の海はかつて魚介類が多く生息し、「豊饒の海」と表現され、干潟が沖に向かい2kmほど伸びる遠浅の海は潮干狩りや海水浴など、人々の生活に欠かせないものであった。その後、高度経済成長や人口増加などの社会的な背景を受け、幕張を含めた千葉県の東京湾沿岸は埋め立てが進められる。遠浅の海は埋め立てにとっても好都合であり、沖合の海底の土砂をパイプで引き流し込む特異な方法で行われた。その結果、沖合には土砂採取跡として、深さ25mほどのいくつもの巨大な海底クレーターが存在する。海底クレーターは青潮の原因となり、現在進行形で海の生態系を犯し続ける、この場所特有の環境問題を引き起こしている。
ところで、月の海とは月の表面で色の濃い部分のことである。月の海は元々巨大クレーターであったが、月の内部からマグマが湧き出し、溜まり、凝固したことで、現在は平坦な地となり、色の濃淡のパターンが形成された。月の海の一つに豊かの海と呼ばれているものがある。本計画は世界においても類を見ない負の遺産としての海底クレーターを再び豊かの海とすべく、国際的な海洋研究所とスパ施設を海上に計画するものである。
- [敷地]
- 千葉県幕張の海上
- [用途]
- 海洋研究所/スパ