2020年度卒業設計 稲芽会賞
祈りの記憶が満ちる野崎島。世界遺産になった島には、かつて野崎(神道)・野首(キリシタン)・舟森(キリシタン)の3つの集落があり、他宗教と関わりながら各々の共同体のもとで信仰を守ってきた。潜伏キリシタンの人々が切り開いた地には、人の営みが消えた今も国内外から巡礼に多く訪れる。朝陽が昇り静かに夕陽が沈む美しい聖なる谷に訪れる人々の身体感覚を研ぎ澄ませ、精神と豊かに向き合う祈りの家を計画した。
精神とかけ離れ技術文明とそれに追いついていけない理性、現代の日本人こそ信仰に無関心で日々その必要を感じないで生きている民族は少ないと言っても良い。人類は祈りに伴う多くの造形を残し、心の確認を強めてきた。日本も決して見劣りするところではなかったが、今やそのほとんどは単なる遺物として残存するのみで、現代を生きる人々にとって観光の対象にこそなれ、心の糧としては無関係である。破壊や荒廃、失われるということがいかに取り返しのつかないものであるか。高齢化・過疎化・観光地化など時代の変化によって集落や地域社会が失った文化や信仰を取り戻し、新たな芽吹きを与え継承してゆくビジョンを示す。
- [敷地]
- 長崎県 野崎島
- [用途]
- 祈りの家