2019年度卒業設計
「集落風景の存続と職人文化、技術の継承」をテーマとし、住み込み、宿泊可能な大工・職人養成所(橋立職人村)を計画した。敷地は石川県 加賀市 橋立町にある、広場に面した丘陵地を選んだ。
橋立町は嘗て北前船の船主集落として栄えた。しかし現在、町は財源不足に陥り、集落を築いてきた職人の減少により、技術の継承が危ぶまれている。また敷地にはブロック塀が並び、明確な境界が存在した。さらに嘗て津々浦々と繋がっていた橋立町も、現在は保守的になり、町民同士の交流が失われている。そうした問題を解決し、集落景観を維持する必要があった。そしてこの場所ならではのアゴラを考えた。
橋立町は三方を山に囲まれており、集落は山の存在を意識して築かれている。そこで山頂から円周を引っ張り、建築を配置した。そして‘5つの繋ぐ形’により建築を構成した。
1. 中庭を囲う、ひとつながりの雁行した縁側
2. 二つの求心力のある広場を繋ぐパス
3. 山と集落の境界となる列柱
4. 広場から扇形に伸びた、漆が塗られた梁
5. 大らかに覆う赤瓦の大屋根
これらの‘繋ぐ形’により職人の親方と生徒、その家族同士、来訪者間で交流が生まれ、さらには中庭や山と集落が繋がる、風通しの良い場所を目指した。