ふたつでひとつの物質試行「50+51」
物質試行51「DUBHOUSE」
鈴木 了二(2010年度紀要AARRより)
「DUBHOUSE」は、美術館という建築の内部にもうひとつの建築を作ろうと考えた。それは美術館の内部に作られた美術館内美術館であり、同時に、短期ならば十分に住むことも可能なスケールを有する住宅なのであった。しかしいっぽうで、それは「下田の住宅」から導き出された模型でもある。模型であると同時に建築であるようなこの不思議な領域が、美術に対して建築だけが仕掛けられる場所であると考えた。3つのヴォイドはここでも庭園でありデッキであって、外部と内部とを繫ぐジョイントであり触手であった。内部には絵画6点、家具4点を置いた。「DUBHOUSE」がはじめからDUBのかかったものである以上、内部に置かれた家具や事物もまたDUBのかかるもの、あるいはDUBのかかったものでなけらばならかった。いろいろ試してみた結果、やはり「DUBHOUSE」自身が厳密にそれしか受け付けなかった。内部には一切の照明をつけず、その意味では美術館のなかに「闇そのもの」を展示しようとしたともいえる。しかし目が慣れさえすれば、その闇が多様な表情と色彩を帯びていることも直に感じることができた。床にはFL300のレベルに強化ガラスが敷き詰め、そこに「DUBHOUSE」の内部に孕まれた底なしの闇を映したいと考えた。フィジカルには内部を歩くことも十分に可能であったが、しかし展示時間内に人が侵入することを禁じた。そこには、ひっそりと見えない誰かが住んでいるにちがいないという気配がしたからである。