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“小説家ごとの全集は、図書館にしかない贅沢” 芥川賞受賞作家が語る 綿矢りさ×堀江敏幸 「私と図書館」開催

早稲田大学図書館では10月21日、中央図書館開館25周年を記念した講演会「私と図書館」を開催しました。本学出身で芥川賞作家の綿矢りさ氏(教育学部卒)、堀江敏幸教授(文学学術院)が約550名の来場者を前に対話形式で図書館の魅力や思い出を語りました。

開会に先立ち、深澤良彰図書館長(理工学術院教授)は「早稲田大学図書館は大学創立の1882年に『図書室』として誕生しました。その後、本学創立100周年を記念して現在の中央図書館(総合学術情報センター)ができました。日本で最初のナイター野球や“最後の早慶戦”などが行われた安部球場の敷地に建ったこの図書館は、スポーツの殿堂から学の殿堂へと変えたわけです。

教育・研究が変わっていく中で図書館も変わらなくてはいけない。これまで“館”にこもって閉ざされた空間で学ぶイメージが大きかったかと思いますが、今回は図書館の外の方々とどういった研究ができるのか考えました。講演会は綿矢さんと文学学術院の堀江教授、VRビュワーは、理工学術院の河合教授のご協力のもと実現したものです。今回の講演会が、新しい図書館の像を示していく、その第一歩になればよいと思っています」と挨拶しました。

講演会の様子
キャプション:(左)堀江敏幸教授(文学学術院)・(右)綿矢りさ氏

(左)堀江敏幸教授(文学学術院)・(右)綿矢りさ氏

(綿矢)「中央図書館は、教育学部の建物(16号館)から近かったのでよく使っていました。大階段には赤いビロードの絨毯が敷かれていて、『風と共に去りぬ』の主人公になったつもりで、気分転換したいときによく階段を上ったり下りたりしていました。今ではコンサートなども行われているようですね」

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中央図書館大階段でのLibraryWeekコンサートの様子

中央図書館大階段でのLibraryWeekコンサートの様子

(堀江)「大階段は、雰囲気のいい場所ですね。実は、僕が学生の頃は、中央図書館はまだ存在していなかった。今、中央図書館が建っている場所には、球場があったんです。安部球場(1902年に戸塚球場として開設された早大野球部のグラウンド。1987年閉鎖)といって、古書店街で買った古本を寝転がって読むには最適なベンチがありました。当時の図書館は、會津八一記念博物館になっています。内部の閲覧室の天井がドーム型になっていて、利用者のページをめくる音が響いて、天井から降ってきました。とても居心地がよかったんです」

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大正14年10月(1925)に竣工した2号館 蔦の絡まる旧図書館(1987年度卒業アルバムより)

大正14年10月(1925)に竣工した2号館 蔦の絡まる旧図書館(1987年度卒業アルバムより)

(綿矢)「小説家ごとの全集があるのは図書館にしかない贅沢だと思います。私は太宰治が好きだったので、全集を読んだりしていました。全集の場合、文庫本とは違って作品全てがフラットに掲載されています。そうすると、いい作品とそうでない作品がはっきりと分かってくるんです。小説家にとっては怖いことですけどね」

(堀江)「綿矢さんの作品全般に、太宰治の影を感じますが、あれは全集などで読んで血肉になっていないと、出せないものだと思っていました。全集は作品を差別しないし、装丁でごまかすこともしない。一人の作家が作家として生きていくために、どのような配分で仕事をしていたか、一目瞭然になります。全ての作品が同じテンションで書かれているわけではありませんから、どこで休んでいたのか、どこで次の作品を考えていたのかを、うかがい知ることができますね」

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「綿矢さんをはじめ好きな作家さんの語り口が、自分の作品にうつってしまうのですが、お二人は読んだ作家の影響を普段どこまで意識して書いているのでしょうか」という参加者の質問に対し、綿矢氏は「太宰を読んだ後の私と全く同じです。先人によって書かれたものの影響のあとに出てくるのが今の文学なのではないでしょうか。だから、影響されることは気にせずに、ぜひまた書いてください」と答えました。続いて堀江教授は「それは素晴らしいこと。太宰を読んだ綿矢さんを読んだ次の世代の人たちが新しい文章を作っていく。吸収したものがいつ出てくるかは分からないが、その時にしか書けないものがあるから、力を出し切って書いていってほしい」とエールを送りました。

綿矢氏は「母校でお話ができて本当に感激しています。また図書館に行きたいという気持ちが湧き上がってきました」と講演会の感想を述べました。

最後にローリー・ゲイ副館長(法学学術院教授)は「大学生の頃からほぼ毎日大学の図書館を通うことが習慣だった私にとっても、図書館は、新しい発見を期待できるわくわくする場所でありながら、心が落ち着く場所でもあります。専任教員になって、授業をすると覚悟はしていたものですが、大学院生と同じように図書館もほぼ毎日通い続けることができるでしょう、とも夢見ました。
大学教員の生活はそんな甘いものではないとすぐ教えられましたが、25年後の今日でも、図書館に対するあこがれに変わりはありません。今日の記念講演会にご参加くださいました皆様も、図書館をより近い、より可能性を秘めている場所とお考えになったのではないかと思っております。どうぞ今後とも、中央図書館の活動につきましてご支援、ご協力を賜りますよう重ねてお願いいたします」と締めくくりました。

なお、国際会議場のロビーに設けた「中央図書館オリジナル360°VR(バーチャルリアリティー)コンテンツ体験コーナー」では、自動書庫の中を探検することができる「BOOKS IN WONDERLAND ~空間の旅~」、本学の所蔵である絵巻物と最先端技術の融合を見ることが出来る「敦盛絵巻 「躍動感あふれる武士の世界」 360° ×3D映像」、「四季源氏 「優美な貴族の世界」 360°×3D映像」などが体験でき、工夫が凝らされたコンテンツに参加者も沸いていました。

VR(バーチャルリアリティー)コンテンツ体験コーナーの様子

VR(バーチャルリアリティー)コンテンツ体験コーナーの様子

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早稲田大学校歌(相馬御風 作並書、請求記号:ト10 1753)、素石歳旦:読書猪図(請求記号:文庫31(雲英文庫)一枚刷49)、南総里見八犬伝第1輯第9輯(請求記号:へ13 3416)と草稿部分(第9輯 巻之46、請求記号:イ4 6007)、Mirrour of the blessed lyf of Jesu Christi(イエス・キリストの祝福されし生涯の鏡、請求記号:NE 3691)など25周年特製クリアファイルで使用された資料が展示されました。

1610219源氏物語絵巻 :四季源氏(請求記号:文庫30 B0423)もVRビュワーの3D映像で使用されています。

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