2025年4月7日(月)、オックスフォード大学サイード経営大学院名誉教授のコリン・メイヤー氏による当センター主催の講演会を開催しました。
講演会では、冒頭に宮島英昭常任理事・商学学術院教授からのご挨拶の後、コリン・メイヤー氏から日本の企業社会が今大きな変革期を迎えており、一連の制度改革が進んでいる一方、企業が環境や社会に与える影響に関する諸問題について未だ多くの課題が残されているとの指摘がありました。
続けて同氏は、投資、成長、雇用を促進し、効率性を引き上げつつも環境や社会への影響を重視するためには、「利益」の概念を再定義することこそが新しい資本主義を構築する鍵であると強調されました。企業の利益は、公共の利益と整合的でなければならず、市場が効果的に機能するためには、その前提として、企業の目的が社会的価値の創出に根差している必要があります。したがって、企業が目指すべきは、問題を生み出すことではなく人々や地球の抱える問題に対する解決策の提示を通じて利益を生み出すこと、すなわち「他社を傷つけることなく利益を得る」という目的でなければならないという考えが示されました。
そのためには、会社法、リーダーシップ、ガバナンス、金融、投資、会計、業績報告を整合的に整備する一方、各国で、家族所有、財団、事業法人などさまざま形態をとるブロック株主による問題解決に向けた長期的なコミットメントとエンゲージメントが果たす役割が重要であるとの考えが示されました。
後半のパネルディスカッションでは、コリン・メイヤー氏、宮島英昭教授に根本直子商学学術院教授も加わり、企業の利益や株式所有構造、ガバナンス、規制、経営に関する多くのトピックを織り交ぜつつ、将来的な資本主義のあるべき姿に関して幅広い視点から活発な議論が繰り広げられました。
100名弱の参加があり、会場からも多くの示唆に富んだ質疑が行われ、本講演会は大変盛況なうちに幕を閉じました。